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俺の交渉のテクニック

あれから数日後、俺のティファー◯は動くことも話す事もなく、どの家庭にも存在する瞬間湯沸かし器に戻ったようだった。先日の萌音華ねぇとの一件、俺がやり遂げたテクニックの判定を聞けないままでいる。まあ、クリアした結果消滅して...なんて可能性もあるが、それにしてもあっけないし味気ない。


この数日で何度か萌音華ねぇが俺の部屋を訪ねてきた。理由はさまざまで、美味しい紅茶が見つかっただとか、やれどこぞのケーキが美味いだの、ここのプリンは格別だだの、暇を持て余し、その消化に俺を利用しているようだった。そんな中、萌音華ねぇは家具やら家電を一式新調したいと考えているらしく、俺が望むなら萌音華ねぇのお古を譲ってくれるそうな。稼ぎがそこそこある萌音華ねぇは、最新式の家具や家電が出るたび購入を検討するなど金遣いが荒い一面がある。しかし言うなれば、お古というには使い込まれていない訳だ。この申し出は俺としてもありがたいし、どうせ捨てるなら新しいものより古いものを捨てた方が道具としても環境に対しても合理的である。


「して、その電気ポットもなかなかに古そうだ。一応、それも新調する予定だから、私のものを使うと良い」


「あー、このティファ◯ルね。...これはいいよ。遠慮しておく。うちにあるやつではまだ新しい方だし、傷みもないから使えるしね!」


「...ふむ、そうか。しかし、貰っておいて損はないだろう。それ以外の他のものは私の知り合いのリサイクル業者へ持っていくから、今度来る時までにダンボールへ詰めておいてくれ。頼んだよ」


萌音華ねぇはそう言って、出ていったのだ。なんとも忙しいものだ。



翌朝。今日も相変わらずティファ◯ルは動かない。いや作動は正常なのだが、俺と会話をしない。色はといえば、俺が本来持っていた、くすんだ白っぽい色に戻っていた。思えばさまざまな色に変化していたが、それも戻ってきたときに聞いてみることにしよう。戻ってこれば、ね。


俺はとりあえず友葉の働いているカフェへ足を運ぶ。彼女を落とすテクニック目的ではなく、普通にプリンとコーヒーを楽しむためである。


「...おい!」


店の入り口に来てみたものの、その扉には”店主急病につき休業とします”の貼り紙があった。ま、風邪なら仕方がない。悪化しないことを祈るのみである。すると、


「あっ...!」


と驚くような声が背後から聞こえた。まあ理由は俺と同じようなものだろうが、とりあえず振り返って顔は確認しておく。

ふわふわとカーブを描く髪がピンクのマフラーにすっぽり収まっており、その出立ちは小動物を思わせるほどちょこんとしていた。しかし具体的には言えないが、主張は激しそうである。いやカーディガンというか、厚めの生地を上から羽織っているからな、真偽の程はたしかではないが、とりあえず主張は激しそうであった。


「もしかして、お店...」


「はい、休業みたいですね。お互い、運が悪かったというか、まあこんな日もありますよ。元気だしてください」


とりあえず慰めておくことにする。なにせ今にも泣きそうな顔でフルフルと震えているんですもの、そりゃあ優しい言葉の一つもかけたくなる。

するとふわふわ髪ピンクマフラーの女性はクスクスと笑いながら、“お気遣いありがとうございます“と遠慮がちに言う。


「もし、時間があるようでしたら、近くのお店に寄っていきませんか?...私、このお店と同じくらい良いお店を知ってるんです!」


「それは良い提案ですね。ご迷惑でなければ、美味しいプリンを逃した者同士、ご縁を大事にしましょう」


「はい!自己紹介がまだでしたね、私は横須賀うららと言います!うららは平仮名です」


「これはご丁寧にどうも、相野優士と申します。では、早速案内してもらって良いですか?自己紹介の続きは歩きながらで」


「そうですね、では行きましょう!」


首を傾けながら笑う彼女に、可愛さの洗礼を受けつつも、何か俺の本能がアラートを鳴らしている気がしてならなかった。

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