うん、まあまあまあ…
試験を行う場所はギルドの奥にある今回の様に試験などに使われる訓練場だ。
大規模依頼の説明などにも使われる空間であるため、対人戦が十分に行えるだけの広さでありながら、壁も屋根もあるしっかりした作りの場所だ。
「試験内容は先に伝えた通り、ゼロがどの程度戦えるのか、それをアルケスと模擬戦を行い判断する。判断するのは私とアルケスの両名だ。ただし、合否の最終決定権は私にあり、あくまでアルケスの判断は私が判断する際の参考として扱う」
「わかりました」
「はい」
訓練場に向かう途中、ギルド長から試験に関する注意事項が伝えられた。
「アルケスは過去に試験を受けたことがあるからわかっていると思うが、武器はどちらも木剣を使ってもらう。それでは問題がある場合は先にもうしでてくれ。それと木剣を使うが、当然試験である以上過剰な攻撃は禁止。明らかに不必要な攻撃を行った場合はペナルティが課されることになっている」
訓練場を使うのは今回が初めてだ。
昔は訓練場を使う許可を貰うこともできなかったからなぁ。まあ、もらえたところで使うことはなかっただろうが。
そうして訓練場に到着してすぐに試験の準備が進められた。
俺は特に準備する物はないため、そのまま試験で使う木剣を受け取り何度か感覚を確認するために素振りをした。
やはりと言うか、武器として使うために作られただけあり、なかなか手に馴染む。
俺が今使っている武器は昔に拾った木の棒だ。なんだかんだ壊れることなく長いこと使っていたこともあり、木の棒とはいえかなり手に馴染んでいる。
まあ、ずっとそれでモンスターを狩り続けてきたことで、もう普通の木の棒とは呼べないくらいに変質してしまっているんだけどな。形はともかく色はもうどす黒いし。
一応武器としての名前を付けていて、俺はモックスカリバー2世と呼んでいる。
1世は家を追い出された時に持ってくることが出来なかったため、現在どうなっているのかは不明だ。まあ、名前を付けていてもただの枝だったし、俺の私物を残しておくことはないだろうから、おそらく薪として使われてしまっているだろう。
「準備はいいか?」
アルケスの方も準備が終わったらしく、それを見たギルド長から確認の声がかかる。
「大丈夫です」
「よし、それじゃあ試験を開始する。双方剣を構えよ」
さて、現グニアス最強と呼ばれている男の強さはどんなものだろうな。
「これより採掘者ゼロの昇級試験を開始する。先ほど述べた注意点を忘れず、試験を行うように。それでは、始め!」
俺とアルケスが訓練場の中心で互いに10メートルほど離れたことを確認したあと、ギルド長の合図で試験が開始される。
しかし、俺もアルケスもすぐに動き出すことはなかった。
「まずはおれから行った方が良いやつですよね?」
「実力を見るという点ではそうなる。いきなり私から攻めてもあまりよくはないだろう」
「そうですよね。それじゃあ行きます」
そう宣言してから一気に距離を詰め、軽いジャブとしてアルケス目掛けて木剣を振り下ろす。
「おっと」
事前に攻撃宣言していたこともあり、俺の攻撃はあっさり回避された。同時にアルケスに反撃してくるような初期動作が見られたが、試験であることを考慮したのか、あくまで構えただけでそれ以上のことはしてこなかった。
「なかなか鋭い攻撃だ」
「そう言ってくれると嬉しいですね。もう少し攻撃してみますね」
「ああ、来なさい」
最初の一撃を避けたからか、少し余裕そうな表情をしたアルケスが俺に向けてにやりと笑った。
その表情に若干イラついたので少し意地悪をしてみることにした。
俺の攻撃を余裕そうに避け続けるアルケスに、詰将棋をする要領で逃げ場を減らしながら攻撃をしていく。そしてアルケスは6発目で避けることが出来なくなり、俺の攻撃を木剣で受け止めた。
ガツンと硬い木同士が当たった音が鳴り、木剣が交差する奥でアルケスが驚きの表情を浮かべているのが見えた。
「ありがとうございます」
「あ、ああ」
そう言って押し合っていた木剣を引く。
それに少し遅れてアルケスが反応し、同じように木剣をひっこめた。
「今度はアルケスさんから攻撃してもらってもいいですか」
「……わかった。行くぞ」
最初に比べ少し真剣な表情になったアルケスが俺に向かって木剣を振るう。剣速はそこまでない。あくまで試験官として徹底して動いているのだろう。
「はっ!」
時折、フェイントをかけるように剣速を変えて攻撃してくるが、それもすべて避ける。そして、10回以上連続で攻撃がかわされたことで少し焦りが出たのか、今までとは違い少し鋭い攻撃が飛んできた。
これまで通り回避することもできたが、さすがにこれ以上回避を続けていても終わらないと判断して、この攻撃はそのまま木剣で受け止める。
「っ!」
余裕をもって受け止められると思っていなかったのか、アルケスの表情が一瞬だけ驚きを覗かせていた。
「そこまでっ!」
ギルド長がもう十分だと判断したようで、俺がアルケスの攻撃を防いだところで試験は終わりとなった。
「2人ともこちらへ来るように」
ギルド長が俺たちを呼び戻す。これで試験の合否が分かるわけだが、まあ戦った感じこれで不合格になるようなことはないだろう。
「ゼロの試験結果だが、アルケス。お前から見てゼロはどうだった?」
「正直、最初は見た目でどうだろうなと思っていました。しかし、戦ってみると凄いですね。こちらは手を抜いていたとはいえ、あれほど戦えるとは思っていませんでした。これなら十分ランク3でやっていけると思います」
意外と正当な評価を下してきたな。まあここで難癖を付ければ本人の評価に響くし、こうなるのは当たり前か。
「なるほどな。私からも、外から見ていてランクを上げても問題はないと判断した。よって、ゼロの昇級試験は合格とする。正式な手続きは受付の方で行う。試験官の報酬もそこで支払おう」
そうして試験の合否が決まり、その後受付に戻るとサラさんはすでに勤務時間外になったのか受け付けには別の女性が立っていた。
そこで俺の採掘者カードを更新してもらい、俺はランク3の採掘者になることが出来た。
その後、ギルド長たちと別れ、俺はギルドから出た。
ギルドを出てからグニアスの町を見て周りながら試験内容を思い返す。
正直な感想として、思っていたよりアルケスの実力は高くなさそうだった。
あくまで木剣での打ち合いでそう感じただけなので、実際の実力はもっと高い可能性はあるが、少なくとも剣士としての実力はまあまあ程度だと思われる。
グニアス最強と聞いていたから期待しすぎていただけかもしれないが、ちょっと落胆というか、正直微妙な感じだった。
まあ、あの感じからすると正面からの戦闘よりもからめ手が強いタイプなのだろう。初手の反撃の構えからかなり慣れた様子があったので、カウンタータイプの可能性が高そうだ。
まあ、ともかく合格することが出来たので、これからはランク3の採掘者として活動できるわけだ。
これでダンジョンにも正式に入ることが出来るようになったな。
今日はまだ周囲の情報収集に当てるとして、明日からは取り合えずダンジョンに潜って当分の活動費を稼ぐことにしよう。




