再会と試験官
ラムたちに今のグニアスの町を案内した貰った後、ギルドへ戻りゴルドーの言っていた北の避けるべき範囲を教えてもらった。
その後は2人と別れ、ギルド長と再度やり取りをした後、案内の中で紹介してもらった宿屋に泊まった。
宿代に関しては一時的な貸し借りとしてギルド長から宿屋で一泊できるだけの金額を受け取った。
これに関してはほぼ確実に俺の採掘者ランクが3まで上げられること決まっているということで、ランクが上がった後に返金することを約束したうえで受け取った形だ。
とはいえ、まだ正式にランクが上がっていない状態でお金を貸してくれたギルド長には本当に感謝しかない。
実のところ、地上に戻って来る前は宿に泊まるのではなく、昔みたいにギルドで寝泊まりが出来ないかと考えていた。しかし、さすがに今の人の多さと規模では難しいと断られてしまった。
まあ、俺もギルドに居た採掘者の多さからここで寝泊まりするのは無理だろうなと思ったし、そもそも昔も見逃してくれていただけでギルドで寝泊まりをするのは駄目だったからな。
まあ、そんなわけで地上に戻って2日目。
採掘者ランクの話をするためにギルドに向かう。朝というには少し遅い時間だが、昼とも言えない時間帯。
朝一でギルドに来て依頼を受ける採掘者たちは、すでにギルドを出た時間くらいだろう。昨日、宿代を借りた際にこのくらいの時間なら人も少ないため待つことなく話が出来るからと、大体この時間に来て欲しいとギルド長に言われた。
ギルドに入れば確かに俺が昨日ギルドに入った時よりも利用者の数は少なかった。
「そう言えば、ギルドに来て欲しいと言われただけで、来たらどうしろとか言われてなかったな」
ギルド長と話をすると言う予定はあるが、それをそのまま受付に伝えていいのか聞いていなかった。
「うーん、まあ。聞かれたらまずいような話ではないだろうし、普通に聞いても問題ないか」
この時間帯に来るように行ってきたのはギルド長なので、この時間の受付担当の人に俺が来ることを伝えている可能性は高い。その際に何か問題があればギルド長から伝えているだろう。
「すみません」
「あ、はい。どのようなご要件—―」
「ギルド長にこの、え?」
ギルド長に呼び出されたと受付の女性に伝えようとしたところ、その女性が俺の顔を見てすごく驚いた表情をした後、すぐ感極まったように涙ぐんだ。
「本当に、生きてた」
「あ」
その言葉を聞いて目の前に居る受付の女性が俺の知っている人物であることにようやく気づいた。
「お久しぶりです。サラさん」
「うん。ゼロ君も」
4年ぶりに見たサラさんは最後に見た時よりもだいぶ大人っぽい女性に成長していた。
俺が初めてあった時はギルドに就職したての16歳と聞いていたので、あれから4年ということは20歳くらいになったということか。それはぱっと見じゃ昔の記憶と結びつけられないな。
「ご心配をおかけしました」
「ううん。それはゼロ君のせいじゃないから、謝る必要はないよ」
サラさんもそうだけどロッソさんやガンズさんたちにも相当心配させてしまっただろうな。早く会って安心させたいが、ロッソさんもガンズさんたちも今はグニアスに居ないらしいんだよなぁ。いつか会いに行かないと。
「ああ、そうだ。ゼロ君はギルド長に呼ばれていたんだったね。今来たことを伝えて来るね」
「あ、はい。お願いします」
まだ話したそうにしていたサラさんだったが、ギルド長から話を聞いていたのか、少し速足でギルドの奥へ入って行った。
「おや」
伝えに行くだけならすぐに戻って来るな、と思いながら少しここに来た時のことを思い出そうとしたところで、後ろから声を掛けられた。
「君は確か昨日、ゴルドーと一緒に居た人だね」
声の元を確認しようと後ろを振り向くと、昨日ゴルドーが要注意と言っていた男が立っていた。
えっと、なんて名前だったか。確かアスケル? とか、そんな感じの名前だったような記憶がある。何か違うような気がするので口には出さないようにしておく。
「そうですね、えっと……」
「ああ、そう言えばまだ名乗っていなかったか。私はアルケスだ。ウルフナイトのリーダーをしている」
「アルケスさんですね。俺はゼロって言います」
あっぶね。アスケルじゃなかった。下手に口に出さないで正解だったな。
「ゼロ君はどうしてこの時間に?」
「ちょっとギルド長に用事がありまして」
「そうなのか……」
アルケスはそう言って俺の顔をじっと見つめてくる。
何か探りを入れられているような気がするな。受付は他にも開いているし、別に俺の後ろに並ぶ必要はないはずなんだが。
「えっと、何かありましたか」
「いや、ゼロという名に聞き覚えがあった気がしたんだ」
「はぁ」
まあ、ダンジョンの崩落に巻き込まれて見つかっていなかった唯一の存在らしいから、その時にでも聞いたのかもしれない。
「ゼロさん。ギルド長が奥に来るようにって、あれ? アルケスさん。こんな時間に来るなんて珍しいですね」
奥からサラさんが戻って来た。そして俺と話していたアルケスの姿を見て、サラさんは不思議そうに首を傾げていた。
なるほどなぁ。普段はこの時間に来ることはほぼないと。やっぱり何か探られていると考えた方がいいかもしれないな。
とはいえ、単純に新しく来た採掘者の実力を測ろうとしているだけかもしれないが、それなら最初に向けて来た視線が気になるところだが。
「いやいや。私だってこの時間にギルドに来ることはあるさ。サラ君はそろそろ交代の時間だろう? 普段はすれ違いになっているだけだと思うよ」
「あー、確かにそれはありそうですね」
あーあー。ちょっと繕えていないぞ、アルケスさん。
表情は朗らかだけど目が余計なことを言うなと、わかり易くサラさんのことを睨んでいる。
感情を隠すならもう少し頑張りましょうってところかな。
「サラさん。俺はもう奥に行っても大丈夫ですか?」
このまま放置してもアルケスからサラさんに対する負の感情が増すだけの気がしたので話に割って入る。
「あ、そうでした。奥に案内しますね。アルケスさんも話の途中に入ってしまって、ごめんなさい」
「いいさ。そちらは仕事で、私はたまたま話しかけていただけだからね」
「そう言っていただけると助かります」
サラさんに連れられてギルドの奥に進む。連れて来られたのは昨日使った部屋と同じ場所だった。
「来たか」
「はい」
「昨日話したランクアップの件だが、正式にランクアップの許可が出た」
「おぉ」
部屋の中に置かれた席に着くと同時にギルド長が昨日の話の続きを話し始めた。
「今回上げられるランクは3までだ。ただ、他の者もいる中で試験は免除するべきではないということになったため、現ランク4の採掘者を試験官としてどこまで戦えるのかの試験を行うことになった」
「ランク4ですか」
昨日の段階で出来るだろうと言われていたが、割とあっさりランクアップの許可が出たな。ただ、なるほど昇級試験は受けないと駄目ってなったわけか。まあ、妥当な判断だろう。
ラムの配信を見ていたら強さ自体はわかると思うが、ちゃんと試験をやりましたっていうアピールは大事だからな。
「試験官はまだ決まっていないが、そのあたりはこちらで決めて大丈夫か?」
「え、はい。大丈夫です」
どうして試験官を誰にするのかという話が出て来たのかと一瞬思ったが、これは出来ればこいつは避けたいとか、そういうことを聞いてくれた感じっぽいな。
仲が悪いとか、目の敵にされている相手が試験官になったら嫌がらせを受けそうだし。
「それじゃあ、表に戻るか」
ランクアップ試験について説明が終わるとギルド長はそう言って席を立ち、俺はその後に続いてまたギルドの受付の前に戻った。
「試験官はゴルドーあたりがいいか。あいつなら試験官はやり慣れているからな」
「そうなんですか?」
「ああ、あいつは割とこういうことを進んでやってくれるからな。見た目に反して良いやつだよ」
「ああ、そうですね」
ゴルドーはギルド長からもそう思われているのか。
見た目は正直、その辺に居そうな破落戸だが、昨日町を案内してくれた時は本当に良いやつだった。なんだかんだゲハとアルケスが来た時、真っ先に自分へ意識が向くように動いてくれたからな。
「ギルド長。もしかしてランク試験ですか?」
「ん? ああ、アルケスか。そうだ」
まだ居たのかこいつ。裏から出てきた時、近くに居なかっただろ。
俺とギルド長が受付に出て来たタイミングでぬるっと現れたアルケスに面倒な予感を覚えた。
「ゼロ君の試験なら俺が試験官になってもいいですか?」
「お前がか? 問題はないが、報酬はほとんどないぞ?」
「報酬目的じゃないので、そこは大丈夫です」
「俺も試験官がアルケスさんでも問題ないですよ」
ギルド長はそう言いながら許可を求めるように俺へ視線を向けて来たので、アルケスが試験官になることを受け入れた。
ゲハがこの町で最強みたいなことを言っていたから、少しアルケスの強さは気になっていた。グニアス最強が別の人物の可能性もあるが、まあゲハの様子とウルフナイトのリーダーと言っていたことから、人違いということもないだろう。
「ならアルケスにランク3昇級試験の試験官の依頼を出す。試験時間だがゼロは今からでも問題ないか?」
「大丈夫です」
「私も大丈夫だ。むしろ今からやってくれた方が助かる」
そんな感じで俺のランクアップ試験を行うことが決定した。




