急転
せっせと地面の下に続いている穴を広げるように掘り進める。
最終的には土の中に掘られたファーラットの巣を完全に埋めることなので、掘られた巣穴の末端までしっかり見つけ崩さなければならない。
「表面はともかく、少しでも下の方になると土が固まっていてなかなか掘り難いな」
ロッソさんから支給されたシャベルはお古の物だったが、しっかりした作りの物で傷んでいるようなところはなかった。
足掛けの部分に体重を乗せて少しでも深くシャベルを刺して、地面を少しづつ掘っていく。
「キッツイ、けど筋トレだと思えば悪くはないかな」
地面を掘るというのはなかなかの重労働だ。
まだ子供の体では一気に地面を掘り進める力も持久力もない。定期的に休憩を取りながら掘られた巣穴に沿って掘り起こしていく。
掘り進めていく中でファーラットが現れたが、そいつらも最初に出て来たファーラットのように倒した。
「さすがに今日中は無理だなぁ。これだけ続いていると」
掘り進めてもまだ続いている地面の下に続いている横穴を見てそう独り言ちる。
地上部分はそこまで多くそうな感じはしなかったのだが、掘ってみればなかなか規模の大きな巣穴だった。
元からロッソさんも1日で終わる想定はしていなかったようだし、陽が落ちた後は無理して作業を続ける必要もないよな。
初日の作業は陽が傾いて来たのを確認して、巣穴の入り口からおよそ直径1メートルの範囲にあるファーラットが掘った横穴を破壊したところで終了した。
2日目。
朝一でファーラットの巣のところまで来ると作業を再開した。
昨日はギルドに戻ってファーラットの討伐報酬を貰って少しご飯を食べてから寝た。
本当に討伐報酬を付けてくれたのには助けられている。これが個別の討伐報酬がなく巣を破壊し終わるまで依頼だった場合、完全に巣を破壊し終えるまで一切お金が入ってこないところだっわけだ。
「本当に一時はどうなることかと思ったけど、優しい人が多くて良かった」
そう独り言を漏らしながら黙々と地面を掘ってファーラットの巣穴を壊していく。
作業している途中、数人の採掘者と思われる人たちが、ギルドに借りた看板を見てこちらに声を掛けることなく通り過ぎて行った。
前日と同じように巣穴を壊している最中に数匹ファーラットが現れ、それを討伐した。
ただ、出て来はしたが前日よりも少ない数しか出てこなかった。
これは前日に10匹近くファーラットを倒したからなのか、もともとこの巣穴を使っていたファーラットが少なかったのか、それとも巣が壊されたことで別の場所にでも移動したのか。
まあ、この3つのどれかなのだろう。
そうして1日目と同じように日が傾き始めたところで作業を止め、ギルドに戻り翌日に備えることにした。
作業3日目にもなると巣穴を破壊していてもファーラットが現れるようなことはなくなった。
おそらく、巣穴の多くが破壊されている上、俺を排除しようと出て来たファーラットたちが総じて倒されたことで、生き残っていたファーラットたちはこの巣穴を放棄して別の場所へ逃げて行ったのだろう。
この日は妨害も入らなかったため休憩以外のタイミングで作業を止めることなく、着実に巣の横穴を見つけては掘り崩して巣穴の破壊を進めることが出来た。
ファーラットの巣穴を壊し始めて4日目になった。
前日までに掘り進めてきた感じから、おそらく今日で作業を終わらせることはできるだろう。
「早めに終わらせて今日の午後はゆっくりしたいところだな」
もう4日目ともなれば体にかなり疲れがたまり始めている。ゆっくり作業を進めても今日中に終わるだろうが、早めに終わらせてから休む方がいいだろう。
ザクザクと土を削り横穴を崩しながら掘り進めようやく残っていた横穴の1つの終点に辿り着いた。
「これで残りは一か所か」
最後の1つを崩せば後は掘り起こした時に周囲に出した土を元に戻して、作業は終わりになる。
巣穴の上にあった枝や草は掘った穴を埋める際に、ファーラットが巣穴を掘る際に掻き出したことで減った土の代わりに埋める予定だ。
そして最後の横穴を崩し切ったところで一旦休憩を取り、最後の作業に取り掛かった。
「おっし終わり!」
街道の横に除けていた巣のカモフラージュ材だった枝なども埋め終わり、掘り返した部分も戻した後に俺が踏み固めた。
俺の体重で踏み潰しただけなので埋め戻したところはまだ柔らかい地面のままだろうが、時間が経てば元の様に硬い地面に戻っていることだろう。
空を見上げれば陽は真上から少し下がってきたところ。理想通り早い時間に作業を終わらせることが出来た。
「さてと、じゃあ戻るか」
この4日間ずっと建てられていた看板を引き抜き、それを抱えて街道を北に進み依頼達成の報告をするためにギルドへ戻ることにした。
「これで少し纏まったお金が入って来るな」
ロッソさんが依頼達成料として設定してくれた額はピゴニャータ討伐依頼の約10回分。4日間で俺が使った労力にあっている額なのかはわからないが、少なくとも同じ日数ピゴニャータを倒し続けていてもその額にはならない。
討伐報酬分も含めればさらに多くなることを考えれば本当にありがたい依頼だった。
「これで、ピゴニャータの討伐依頼が復活するまで余裕が出来た。ロッソさんには足を向けて寝られないな。本当に」
別に恩は感じなくてもいいとは言われたが、さすがにそんなことはできないくらい助かったのだ。
「ん? なん…だ?」
もうすぐギルドがある村の入り口が見えてくるといったところで、突然地面が揺れているような感じが伝わって来た。
この世界に生まれて今まで地震を経験したことは数度。正直、この辺りはあまり地震が起こるような地域ではなかった。
とはいえ、数度経験している以上、全く地震が起きないわけでもない。
「とりあえず、揺れが収まるまでは動かない方がうぐっ!?」
下手に動いて転んで怪我をしないようにとそう口にした瞬間、地面が爆発したような衝撃が伝わって来て、最後まで言葉を出すことが出来なくなった。
さらにその揺れを受けてまともに立っていることが出来なくなり、そのまま大きく揺れる地面の上に転がされるように倒れてしまった。
その次の瞬間、信じられない光景が俺の倒れている下に現れた。
「はっ?」
真下を見たら地面がなかった。
同時に今まで感じていた揺れを感じることはなくなったが、俺の体は重力に引っ張られ地面の下へ向かい始めていた。
その地割れを完全に認識するよりも早く俺の体は地面に生まれた裂け目の中に重力に従い呑まれて行き、それ以上の言葉を発することが出来なくなった。




