第8話 王都の魔法学園
よろしくお願いします
トルム村の一件から数ヶ月が過ぎたある日、父バロウズがレインを書斎に呼び出した。
「レイン、お前に話がある。……王都の『王立魔法学園』への進学の件だ」
「王立魔法学園、ですか」
大陸屈指の名門校であり、各国の貴族子弟や、優れた魔法適性を持つ平民が集う場所だ。三男であるレインには、本来あまり縁のない話だったはずである。
「実は先日、ギルドからの報告を受けた王都の宮廷魔導士長から、直々に打診があってな。『規格外の魔力量と実戦能力を持つ人材を、ぜひ学園で見てみたい』とのことだ」
「……またですか」
レインは思わず遠い目になった。トルム村での浄化術式が、まさかそんなところにまで話が伝わっているとは思っていなかった。
「断ってもよかったのだが、お前としてはどうだ? 王都には最新の魔導書や、優秀な師も揃っている。お前の力を、より正しく伸ばす機会になるとも思うのだが」
レインはしばし考え込んだ。
(目立ちたくない、平穏に過ごしたい……そう思ってきたけど、もう手遅れな気もするしな)
それに、前世の記憶——魔術の理論だけは膨大に持っているものの、この世界の「体系立った」魔法学については、まだ学んでいないことも多い。実戦で使える力と、理論的な裏付けは、また別物だ。
「行ってみようと思います。それに……色々な人に会って、視野を広げるのも悪くないかもしれません」
「そうか。……お前も、大きくなったな」
バロウズは目を細めて微笑んだ。
⸻
入学試験当日、王都の学園の門前には、多くの受験生とその家族が集まっていた。豪奢な馬車から降り立つ貴族の子弟、緊張した面持ちの平民出身の少年少女——様々な人々が入り混じっている。
「筆記試験、実技試験、面接……か。まあ、なんとかなるだろう」
レインは特に気負う様子もなく、試験会場へと向かった。
筆記試験は、この世界の魔法理論の基礎に関するものだった。前世の膨大な知識を持つレインにとっては児戯に等しく、あっという間に満点で解き終えてしまう。
問題は実技試験だった。
「では、次の受験者。魔法陣内で、指定された的に向けて、任意の攻撃魔法を放ってください」
試験官の指示に従い、レインは魔法陣の中央に立った。
(さて、どの程度の威力で……)
前世では大陸を焼き尽くすほどの魔術を操っていたレインにとって、力加減は常に頭を悩ませる問題だった。だが今回は、あくまで「試験」だ。目立ちすぎず、かといって不合格になるほど低すぎず——
「では、始めてください」
レインは指定の的に向けて手をかざし、初級の火炎魔法を放った。控えめに、しかし正確に的の中心を撃ち抜く。
「うむ、及第点だな。……ただ、記録によれば、貴殿はトルム村での大規模浄化術式の実行者と聞いているが」
試験官の一人が、鋭い目でレインを見据えた。
「え、あ……その節は……」
「今の魔法、明らかに手加減しているだろう。この学園は、真の実力を見極める場だ。本気を見せてもらいたい」
(ば、バレた……)
レインは内心で冷や汗をかきながらも、渋々もう一段階、威力を上げた魔法を放つことになった。的は木っ端微塵に砕け散り、試験会場全体がどよめいた。
「……満点、いや、規格外だな。合格だ」
こうしてレインは、周囲の予想を大きく上回る成績で、王立魔法学園への入学を果たしたのだった。
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