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元魔王、伯爵家の三男に生まれる〜実は俺を倒した勇者は俺が育てていたのだった〜  作者: KiedeJWL


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第6話 魔素汚染と、前世の知恵

よろしくお願いします

トルム村襲撃事件から数週間後、村では奇妙な病が広がり始めていた。


「熱が下がらない……」「体中に黒い痣が……」「もう三人目の子供が倒れました……!」


村を訪れたレインは、集会所に横たわる病人たちの様子に、眉をひそめた。


「これは……」


村の薬師が、困り果てた様子で首を振った。


「レイン様、申し訳ございません。私の知識では、これがどういう病なのか、まるで見当がつかず……」


レインは病人の一人、幼い少女の額に手を触れた。その瞬間、指先にピリッとした異質な感覚が走る。


(この感覚……間違いない。魔素汚染だ)


前世の記憶が、鮮明に蘇った。魔王として世界に君臨していた頃、レインは——いや、ヴァルガイムは、大陸各地で似たような症例を数え切れないほど目にしてきた。魔物の巣が特定の地脈の上に長期間存在すると、周辺の土地や水源に「濃縮された魔素」が蓄積し、それを摂取した人間が発症する病だ。


「団長さん、先日のゴブリンの群れですが、あれはどこから来ていたか分かりますか」


「え? た、確か……村の北にある、古い洞穴からだと聞いていますが……」


「そこに案内してもらえますか。おそらく、病の原因はそこにあります」

⸻

村の北にある洞穴には、案の定、長期間にわたって魔物が巣食っていた痕跡と、異様なまでに濃密な魔素の澱みがあった。地面には黒ずんだ結晶のようなものがこびりついている。


(これだ。この魔素結晶が、地下水脈を汚染している)


前世の知識——大陸中の魔術と地脈に精通していたヴァルガイムの記憶が、レインの中で急速に組み上がっていく。


「浄化魔法……いや、この規模なら、地脈そのものに干渉する必要がある」


レインは洞穴の中心に立つと、両手を地面にかざした。かつて魔王軍が、荒廃した土地を再生させるために用いていた大規模浄化術式——それを、レインは前世の記憶のままに紡いでいく。


(この術式は、本来なら熟練の大魔術師が十数人がかりで行うものだが……)


淡い光が、レインの手のひらから地面へと広がっていく。黒ずんだ魔素結晶が、みるみるうちに透明な光の粒子へと変わり、消えていった。洞穴全体を包んでいた重苦しい空気が、嘘のように澄んでいく。


一部始終を見守っていた薬師は、口をあんぐりと開けていた。


「な……何ですか、今のは……。あんな大規模な浄化術式、王都の大聖堂の大司教様でも……!」


「え、あ……その、たまたま本で読んだ知識を、試してみただけで……」


しどろもどろに誤魔化すレインだったが、もはや誰も本気にはしていなかった。

⸻

浄化から三日後、村の病人たちは目に見えて回復していった。あの幼い少女も、すっかり熱が下がり、笑顔を取り戻している。


「レイン様のおかげです。本当に、なんとお礼を言ったらいいか……」


少女の母親が、涙ながらにレインの手を握った。


「僕は、たまたま知識があっただけです。それに、まだ皆さんの体力が完全に戻ったわけじゃない。しばらくは無理をせず、休んでください」


レインは穏やかに微笑んだ。


(前世では、この力で……何万人もの命を、奪ってきた。でも今は……)


前世で振るった力の多くは、破壊と支配のためのものだった。だが今、同じ力を使って人を救うことができる。その事実が、レインの胸に、静かで温かい感覚を灯していった。


(悪くない。この人生は……悪くない)


村への帰り道、レインを乗せた馬車の窓から見える夕焼けは、前世で見たどの景色よりも、穏やかで美しいものに見えた。

よろしくお願いします

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