第5話 辺境の村、襲撃
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Dランクに昇格して間もなく、レインの実家であるアルダーシュ伯爵領に緊急の報せが届いた。
「レイン様! 大変です、領内のトルム村が魔物の群れに襲われているとの報告が!」
執事の慌てた声に、レインは即座に立ち上がった。
「規模は!?」
「詳細は不明ですが、ゴブリンの群れに加え、上位種と思われる個体も確認されているとのことです……! 領軍は現在、別件で東の砦に出払っており、村には自警団しか……!」
「僕が行きます」
レインは迷わず答えた。父バロウズは一瞬渋る様子を見せたが、レインの実力を(この数ヶ月の噂で)十分に理解していたこともあり、頷いた。
「……分かった。だが無茶はするな。応援も向かわせる」
「はい。行ってきます」
レインは剣を腰に、馬を駆って一人、トルム村へと向かった。
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村に到着した頃には、既に戦闘は始まっていた。木の柵の内側で、村の自警団と、鎌や鍬を手にした村人たちが必死に抵抗している。柵の外には、数十体のゴブリンと、それを統率する一回り大きな個体——ホブゴブリンの姿があった。
「くそっ、数が多すぎる……! もう柵が保たない……!」
自警団の団長らしき壮年の男が、悲鳴に近い声を上げていた。子供や女性たちは村の中央にある集会所に避難しているが、その集会所の屋根さえ、既に一部が崩れかけている。
(このままでは、村が落ちる)
レインは馬から飛び降りると、剣を抜き放ち、柵の外側へと躍り出た。
「な、なんだあの子供は!?」
「危ない、下がれ!」
村人たちの叫びを背に、レインはゴブリンの群れへと単身で切り込んでいった。
一体、また一体と、レインの剣がゴブリンを斬り伏せていく。その動きに、一切の無駄がない。まるで舞うように、しかし確実に、群れを削っていく。
(数はいるが、脅威度は低い。問題は……)
レインの視線が、群れの中心にいるホブゴブリンに向いた。統率者格のその個体は、明らかに他のゴブリンより知能が高く、狡猾な動きを見せている。
「ゴギャアアッ!」
ホブゴブリンが咆哮し、手にした大剣を振りかざしてレインに突撃してきた。並みの兵士であれば、一撃で両断されるであろう重い一撃。
レインはそれを、正面から剣で受け止めた。
ギィン、と甲高い金属音が響き渡り、ホブゴブリンの大剣が根本から折れ砕けた。
「グ、グギャ……!?」
驚愕するホブゴブリンに、レインは容赦なく踏み込み、その首を刎ねた。
指揮官を失ったゴブリンの群れは、途端に統制を失い、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑い始めた。残った個体を数体片付けると、戦いはあっけなく終わりを迎えた。
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「た、助かった……本当に助かった……」
自警団の団長が、涙を浮かべながらレインの手を握った。周囲の村人たちからも、感謝と称賛の声が次々と上がる。
「あんた、アルダーシュ家のご子息だろう!? まさかこんなに強いなんて……!」
「村の恩人だ! ありがとう、本当にありがとう!」
レインは面映ゆさに頬を掻きながらも、村人たちの温かい言葉を、素直に受け止めていた。
(悪くない……いや、これは、思っていた以上に心地よいものだな)
だが同時に、レインの脳裏には、新たな懸念が浮かんでいた。
(なぜ、この辺境の村に、こんな規模のゴブリンの群れが……。しかも統率されていた。誰かが、意図的に仕掛けた可能性は……)
その予感は、後にレインが対峙することになる、四天王ゾルアークの暗躍の、ほんの序章に過ぎなかった。
夜、村の再建作業を手伝いながら、レインは団長に提案を持ちかけた。
「団長さん、この村、防壁をもう少し高く、頑丈にした方がいいと思います。それと、見張り塔を二基ほど増設して……」
「お、おお、そこまで考えてくれるのか、レイン様は」
「僕にできることがあれば、協力させてください。この領地は、いずれ僕の……いえ、僕たち家族が守るべき場所ですから」
こうして、トルム村の防衛強化計画——後の「内政」要素の第一歩が、静かに始まったのだった。
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