第22話 山中の決着
よろしくお願いします
翌朝、レインは山賊たちの拠点と思われる、山中の廃坑跡へと単身向かった。
廃坑の入り口には、粗末な見張りが二人立っていたが、レインはそれを気配を殺して無力化し、内部へと侵入した。
坑道の奥、篝火に照らされた広間には、二十人近い山賊たちが屯していた。中央には、明らかにこの一団を統率する、大柄な男の姿がある。
「……なんだ、てめえは。こんな所に一人で乗り込んでくるとは、命知らずな坊主だな」
首領らしき男が、ニヤリと嗤いながら剣を抜いた。
「あなたたちが、アルダーシュ連合の村々を狙って襲撃を繰り返している一団ですね」
「ほう、よく調べてるじゃねえか。……まあいい、知りすぎたお前には、消えてもらうしかねえな」
首領の合図と共に、山賊たちが一斉にレインへと襲いかかってきた。
だが、その動きは、レインにとってあまりに単調だった。剣を振るう者、槍を突き出す者——それら全てを、レインは最小限の動きで無力化していく。峰打ちで、あるいは的確な当て身で、山賊たちを次々と気絶させていった。
「な、なんだこいつ……! 化け物か!」
数分と経たぬうちに、二十人近い山賊のほとんどが地に伏していた。残るは首領一人。
「くそっ……こうなったら……!」
首領は懐から、見覚えのある黒い結晶を取り出した。それは、以前トルム村の洞穴で見た、魔素結晶に酷似していた。
「おい、何のつもりだ」
「へへ……これを使えば、俺だってお前に負けねえ力が手に入るってもんよ。ある人から貰った、特別な代物でな」
「その結晶……どこで手に入れたんですか」
「知らねえよ、フードを被った気味の悪い野郎から、金と引き換えにな。とにかくこれさえ使えば……!」
首領が結晶を握りしめた瞬間、その体から瘴気が溢れ出し、筋肉が異様に膨れ上がった。目は血走り、理性を失った獣のような形相へと変貌していく。
「グガアアアッ!」
咆哮と共に、首領は膨れ上がった腕でレインに殴りかかってきた。その一撃は、以前の首領とは比較にならない威力を秘めていたが——
レインにとっては、依然として児戯に等しかった。
「悪いけど、その程度じゃ……僕には届きませんよ」
レインは首領の拳を軽く受け流すと、返す刀で首領の腹に一撃を叩き込んだ。首領は白目を剥いて崩れ落ち、体から溢れていた瘴気も、霧散するように消えていった。
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すべての山賊を捕縛し終えたレインは、首領が使っていた黒い結晶を回収しながら、深く考え込んでいた。
(この結晶、明らかに人為的に精製されたものだ。しかも『フードを被った男』から渡された……。これはやはり、ゾルアークの息のかかった何者かが、意図的に山賊たちを操っていた可能性が高い)
辺境地方の結束を乱し、人々の間に不信と混乱の種を撒く——それこそが、この一連の事件の真の目的だったのかもしれない。
村へと戻ったレインを、団長をはじめとする村人たちが、歓喜の声で迎えた。
「レイン様、ありがとうございます! これで交易路も安心です!」
「団長さん、この結晶のことですが……。念のため、王国上層部にも報告した方がいいかもしれません。これは、僕たちだけの問題では済まない可能性があります」
団長は神妙な面持ちで頷いた。
「承知しました。……レイン様、あなたのおかげで、この地域は本当に救われております。……いつか、この恩を返せる日が来ればいいのですが」
「そんな、恩だなんて。僕は、大切な人たちを守りたいだけですから」
レインは穏やかに微笑んだ。だがその胸中では、ゾルアークという存在が、着実にその触手を辺境地方にまで伸ばしつつあるという事実に、静かな緊張感を募らせていた。
(この一件、王都に戻ったら、学園長にも報告しないと。……そろそろ、大きな動きが近づいているのかもしれない)
冬の澄んだ空気の中、レインは遠く連なる山々を見つめながら、来るべき戦いへの覚悟を、静かに固めていくのだった。
よろしくお願いします




