↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元魔王、伯爵家の三男に生まれる〜実は俺を倒した勇者は俺が育てていたのだった〜  作者: KiedeJWL


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/26

第1話「規格外の赤子」

よろしくお願いします

「オギャア!! オギャアアアア!!」


辺境の地、アルダーシュ伯爵領。その屋敷の一室に、けたたましい産声が響き渡った。


「男の子です、旦那様!」


産婆の声に、当主バロウズ・フォル・アルダーシュは安堵の息を吐いた。三男の誕生である。跡継ぎではないから、気楽な話ではあった。


「レインと名付けよう」


生まれたばかりの赤子——レイン・フォル・アルダーシュの中に眠るのは、三百年の記憶を持つ元魔王・ヴァルガイムの魂だった。


もっとも、赤子である今は、その記憶も力もまだ深い眠りの底にある。ただ、時折——


「うおっ!? この子、握力強すぎませんか!?」


乳母の指を、赤子のレインが無邪気に握った瞬間、乳母は悲鳴を上げた。指の骨が軋む音がしたのだ。


(……力の一部が、もう漏れ出しているのか)


生後半年、まだ言葉も話せないレインの意識の奥底で、微睡んでいたヴァルガイムの自我がわずかに顔を出していた。ただの赤子としての本能に紛れ、断片的な前世の記憶が明滅する。


そして5歳になる頃には——


「レイン様、また薪割りを一人でやってしまわれたのですか……」


屋敷のメイド、ミレイユが目を丸くして呟いた。庭に山と積まれた、綺麗に割られた薪の束。それを、5歳の子供が涼しい顔でやってのけたというのだ。


「うん! お手伝いしたくて」


無邪気に笑うレインを前に、ミレイユは頬を引きつらせた。この屋敷の力自慢の下男が、丸一日かけてようやく終わらせる量である。


(この子……いったい何者なのかしら)


ミレイユは深く考えないことにした。彼女はまだ知らない。この愛らしい少年の魂の奥底に、かつて大陸を震撼させた魔王の記憶が眠っていることを。

⸻

夜、レインは自室のベッドで一人、天井を見つめていた。


(……また、あの夢を見た)


炎に包まれた戦場、玉座の間、そして自分の胸を貫く聖剣。その記憶は、断片的ながら日に日に鮮明さを増していた。


(俺は……前世で、魔王だったのか)


最初は信じられなかった。だが薪割りの一件のように、体が覚えている「力」の存在は、否定しようがなかった。


(平穏に生きたい。目立たず、家族と穏やかに……そう思っていたのに)


レインは小さくため息をついた。三男という気楽な立場に生まれたのは、ある意味幸運だったと言える。跡継ぎのプレッシャーもなく、好きに生きられる。


(せめて、この力は隠しておこう。目立つことは、ろくなことにならない)


そう心に決めたレインだったが——彼はまだ知らなかった。この決意が、これから何度も、そして盛大に裏切られることになることを。

よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。