第16話 禁書庫の手がかり
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野外実習の一件から数日、レインは学園の図書館、その奥にある「禁書庫」への立ち入り許可を申請していた。禁書庫には、古代の魔族に関する貴重な文献が保管されており、通常は上級生や教員でなければ閲覧できない。
「ゾルアークについて調べたい、か。……珍しいこともあるものだ」
司書を務める初老の教師、ロドウィックは、眼鏡の奥の目を細めた。
「学園長からは話を聞いている。野外実習での一件だな。……いいだろう、案内しよう」
薄暗い禁書庫の奥、埃を被った書架の間を進みながら、ロドウィックは古い巻物を一つ取り出した。
「これは、二百年ほど前に記された『魔族四天王記』の写本だ。当時の魔王軍について、断片的にだが記録が残っている」
レインは震える手で巻物を広げた。そこには、かつて自分——ヴァルガイムに仕えていた四天王の名が、確かに記されていた。
『四天王・ゾルアーク。魔王ヴァルガイムに最も長く仕えた側近であり、その忠誠心は他の追随を許さなかったと伝えられる。しかし魔王の死後、忽然と姿を消し、以後の消息は途絶えている……』
(最も忠実だった、はずの男が……なぜ今、こんな形で牙を剥いているんだ)
「レイン君、何か気になることでも?」
ロドウィックの問いに、レインは首を振った。
「いえ……。この四天王ゾルアークについて、他に何か記録は残っていませんか」
「うーん……。これ以上詳しい記述となると、王立公文書館の機密資料になるだろうな。学生の身分では、そう簡単には閲覧できまい」
(公文書館、か……。いつか機会を作って、調べてみる必要があるかもしれない)
禁書庫を後にしながら、レインの胸中には、晴れない霧のような違和感が残り続けていた。
(あいつは、俺の——ヴァルガイムの死後に、何を見て、何を思って、豹変したんだ)
その答えに辿り着くには、まだ多くの時間が必要だった。
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