第15話 フィオナの想い、日常のかけがえのなさ
よろしくお願いします
野外実習から戻った後も、レインの脳裏からはローブの男の言葉が離れなかった。
「レイン君、最近ちょっと考え込んでること多いよね」
放課後の教室、フィオナが心配そうにレインの顔を覗き込んだ。
「あ、ごめん。ちょっと考え事してた」
「あの夜のこと、まだ気にしてるんでしょ」
フィオナは静かにレインの隣に座った。
「あたし、詳しいことは分からないけど……レイン君が何か大きなものと向き合おうとしてるのは、なんとなく感じてる。だから……無理に一人で抱え込まないでね」
「フィオナ……」
「あたしも、ドミトリ君も、レイン君の力になりたいって思ってる。だから、頼ってほしいな」
まっすぐな瞳で告げるフィオナに、レインは胸の奥が温かくなるのを感じた。
(前世では……こんな風に、誰かに心配してもらえることなんて、なかったな)
魔王として君臨していた頃、周囲にいたのは忠誠を誓う臣下か、あるいは恐怖に震える敵ばかりだった。対等な友人として、こうして純粋に自分を案じてくれる存在——それは、レインにとって何よりも得難いものだった。
「ありがとう、フィオナ。……頼りにしてる」
「うん! だから、たまには一緒に息抜きもしようね。今度の休み、街の新しいカフェに行かない? 美味しいケーキがあるって噂なの」
「ふふ、それはいいね」
レインは久しぶりに、心から穏やかな笑顔を浮かべた。ゾルアークの影、前世の記憶、そして自分がこれから背負うことになるかもしれない大きな運命——それらの重さを一時忘れさせてくれる、こうした何気ない日常のやり取りが、レインにとって何よりの支えになっていた。
窓の外には、夕暮れの王都の街並みが広がっている。穏やかな喧騒に包まれたその景色を眺めながら、レインは静かに決意を新たにした。
(この日常を守るためにも……もっと強くならないと。ゾルアーク、お前が何を企んでいるにせよ、俺は絶対に、大切なものを奪わせはしない)
よろしくお願いします




