第14話 野外学習と蠢く陰
よろしくお願いします
Cランク昇格から数週間後、学園では毎年恒例の「野外実習」が行われることになった。二年生全体が数班に分かれ、王都近郊の森で数日間の生存訓練とフィールドワークを行うというものだ。
「レイン君と同じ班になれてよかった!」
フィオナが嬉しそうに言った。同じ班には、ドミトリと、もう二名の生徒が加わっている。
野営地の設営、薬草採取、簡易な魔物討伐——実習は概ね順調に進んでいたが、二日目の夜、異変が起きた。
「な、なんだ、あの気配……!」
見張りに立っていたドミトリが、緊張した声を上げた。森の奥、月明かりの届かない暗がりから、ぞわりとした悪寒を誘う気配が近づいてくる。
レインは即座にテントから飛び出した。
(この気配……間違いない。学園地下遺構で感じたものと、同種の……いや、それ以上に濃い)
森の闇の中から現れたのは、フード付きのローブを纏った、明らかに人ならざる何者かだった。フードの下から覗く瞳は、爬虫類のように縦に裂けている。
「……随分と、俺たちの縄張りに首を突っ込んでくれるものだな、坊主」
ローブの男が、嘲るような声で言った。
「あなたは……」
「名乗るほどのものじゃあない。ただ、お前がトルム村の一件や、学園の遺構の一件を台無しにしてくれた小僧だということは知っている。ゾルアーク様も、お前のことを気にかけていらっしゃるようでな」
その名を聞いた瞬間、レインの中で、前世の記憶が一気に色濃く蘇った。
(ゾルアーク——やはり、繋がっていたか)
「お前……その名を、どこで」
「くく……興味があるなら、もっと強くなって聞きに来ることだな。今日のところは、これで挨拶代わりだ」
ローブの男が手をかざすと、周囲に潜んでいたのだろう、数体の魔素憑依体が姿を現し、一斉にレインたちへと襲いかかってきた。
「みんな、下がって!」
レインは剣を抜き、前に出た。憑依体の動きは、以前学園の遺構で見たものよりも、明らかに統率されていた。
「フィオナ、詠唱の準備を! ドミトリさんは僕の後方支援を!」
「わ、分かった!」
「了解だ!」
三人の連携は、この夏の合宿での特訓を経て、格段に洗練されていた。フィオナの補助魔法がレインの動きを後押しし、ドミトリの牽制がレインの死角を埋める。
レインは憑依体の群れを的確に斬り伏せながら、ローブの男の姿を探した。だが、戦闘の混乱に紛れ、男の姿は既に闇の中へと消え去っていた。
「くそっ、逃げられたか……」
全ての憑依体を掃討した後、レインは苦々しく呟いた。
「レイン……今のは、いったい」
ドミトリが、荒い息をつきながら問いかけた。
「……分かりません。ただ、この件の裏に、何か大きな存在が関わっているのは間違いなさそうです」
レインの脳裏には、ゾルアークという名前が、はっきりと刻み込まれていた。前世の記憶の中で、忠実な四天王だったはずのその名が、なぜ今、こうも不穏な形で自分の周りに現れるのか——その答えには、まだ辿り着けそうになかった。
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