エピローグ 穏やかな夏の始まりに
よろしくお願いします
学園の一学期が終わり、長い夏休みが始まった。レインは久しぶりに、故郷であるアルダーシュ伯爵領へと帰省していた。
「レイン様、お帰りなさいませ!」
屋敷の門前で出迎えたミレイユの笑顔に、レインも自然と頬を緩めた。
「ただいま、ミレイユ。変わりない?」
「はい、皆様お元気にお過ごしです。……それにしても、レイン様、少し……いえ、大分、雰囲気が変わられましたね」
「そうかな」
「はい。以前は、どこか肩に力が入っているようでしたけれど、今は……とても自然体でいらっしゃいます」
レインは苦笑した。学園での日々、そしてゾルアークの影を感じ取ったあの事件を経て、自分の中で何かが少しずつ定まりつつあることを、レイン自身も感じていた。
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夕食の席では、父バロウズと母、そして兄たちが、レインの学園生活の話に耳を傾けていた。
「地下遺構の一件は、王都でも大変な話題になったそうだな。伯爵家としても鼻が高い」
「僕としては、あまり目立ちたくなかったんですけどね……」
レインの言葉に、家族一同、思わず笑い声を上げた。
「無理な話だな、それは」
長兄が肩をすくめて言った。
「お前がどれだけ隠そうとしても、その規格外の力は、いずれ世に知れ渡る運命だったのだろうさ。だったら、堂々としていればいい。お前は、誰も傷つけるためではなく、誰かを守るためにその力を使ってきた。それは、胸を張っていいことだと、俺は思うぞ」
「兄上……」
レインは、胸の奥が温かくなるのを感じた。前世では決して得られなかった、家族からの、飾らない言葉。
(そうだ。前世で失敗したのは、力の使い方じゃない。……誰かと、こうして温かい時間を分かち合うことを、忘れてしまったからだ)
魔王として君臨していた頃のヴァルガイムには、こうした穏やかな夕食の時間などなかった。あったのは、常に緊張と警戒に満ちた、孤独な統治の日々だけだった。
(今度こそ……この温かさを、大切にしよう)
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食後、レインは一人、屋敷の庭に出て夜空を見上げた。満天の星の下、遠くトルム村の方角から、かすかに祭りの灯りが揺らめいているのが見えた。防壁強化計画が実を結び、村では収穫祭が開かれているのだという。
(来年は、もっとたくさんの村と協力体制を築けるだろう。そして学園でも、もっと多くのことを学べるはずだ)
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