超えるべき壁
「それがどうした?」
浮遊してる親父は動かない。白い柱が直撃する。命中してる。ダメージがゴリゴリ入ってるはずなのに、親父はこっちに向かってくる。
「お前は雨粒で怪我した事あるか?」
くっ、何言ってやがる。奴にとって僕のマジックミサイルは雨粒のようなもんって言ってるのか? いや、そんなはずはない。マジックミサイルは不可避かつ、絶対にダメージが入る、最弱に見せかけて最強の攻撃魔法だ。
「ああ、いいシャワーだな。汚れがよく取れる。一週間ぶりだからな。嘘だ。実は三日ぶりだ。こう見えて俺様は意外にきれい好きだからな」
化け物がっ! 親父は両手を上げて脇の下を交互にマジックミサイルを受けてやがる。まるでシャワーを浴びてるみたいだ。何がきれい好きだ。毎日風呂に入りやがれ。強がりだ。そうに違いない。僕は更にミサイルの数を増やす。
「無駄だ。お前には今の状況はわかんねーんだろな。おめーのミサイルシャワーの威力より、俺様の再生能力の方が上なだけだ。今の十倍の威力だったとしても変わんねーよ」
くそっ。まじか。僕が自分のマナの回復に合わせてミサイルを出してるのと似た感じで、親父は僕のミサイルのダメージより回復してるってわけか? ヤベぇ回復能力だな、プラナリアかよ。このままじゃ膠着状態。単純な殴り合いじゃ親父にはまだ追いつけない。やるしかない。全部は駄目だった時にまずい。半分。半分のマナを全部マジックミサイルに変えてやる。狙うは親父の頭。さすがに頭の一点にミサイルを集中したら、あの化け物でも無傷じゃないだろう。
「食らえ親父、プレゼントだ!」
わざわざ口に出すのはアイツが避けないようにするためだ。
「うおおおおおおーーーーっ!」
ヤバい。半分はやり過ぎた。右手が弾けそうだ。
「これでもくらえ!!」
僕の手から巨大なミサイルの塊が放出される。ヤバっ、僕の背丈くらいあるわ。
チュイーーーーーーン!
空間が軋む。無理矢理ミサイルを圧縮した音だろう。今僕を横から見たら、手から巨大な横にした白いタマネギみたいなものが出てるように見えるだろう。これはナシだな。親父が見えない。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!
まるで工事現場の音を大きくしたような音がする。昭和の工事はそういう騒音塗れだったのに、最近の工事の音はかなり静かになっている。静音工具の進化だろう。
光が消え、右手を下ろすと、やはり親父は立っている。あ、兜が無い。吹っ飛んだのか消滅したのか?
「え、あんた誰?」
頭が追いつかない。黒い鎧を纏ってるのは黒髪の青年。吊り上がった目にツンツン頭。言わば和製シド・ヴィシャス。シドより目力が凄い。もしかして、親父? あまりにもイメージが違い過ぎて頭がその考えを拒絶する。
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