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 再戦


「マグロ、妙な小細工はいらんぞ。僕は親父をタイマンで倒す!」


 親父がいる部屋の前の扉で僕は宣言する。あいつは、あいつだけは僕が直々に天誅をくれてやる。『屁死』、その屈辱的な言葉が頭をよぎる。自然に奥歯を噛み締めてしまう。屈辱、カノッサの屈辱だ。カノッサの屈辱って何だろう?


「キラさん」


 サリーが声をかけてくる。このよそよそしさやだなー。


「タイマンって何? 怠ける事なの? 怠けてどうやって倒すの?」


 そうだね。最近はタイマンって言葉聞かないよね。昭和のヤンキー漫画じゃ必須言語だったのに。


「サリー、タイマンって言うのはある種のスラングで、一対一で戦うって事だよ」


「そうなのねー。あの親父さんと戦うんだから、なにかの秘策だとおもったわ」


 サリーには、僕の記憶をダウンロードされたはずだけど、結構共有出来てない言葉があるなー。


 僕を何か言いたそうにウシオが見てる。


「ご主人様……ご武運を……」


 今の言葉の間。本当はウシオが先に挑みたいんだろう。けど、ここは我慢してもらう。


「というわけで、手出しは無用だ。行くぞ」


 戦いの流れをシミュレートする。多分親父はまた腰巻き一丁だ。だから僕も普段着だ。まずはあいつを追い詰めて武装させる。親父が武装したら僕も武装して肉弾戦に持ち込む。キラで親父と戦ってから長い事経ってるが、あの頃と親父の強さが変わってないなら僕の方が強いはず。あれから修練しまくったからな。


 僕は親父がいる部屋の扉を開ける。部屋の中は今回は闇ではなく、二列の松明が部屋を照らしている。薄暗い部屋には誰もいない。親父逃げたのか? それとも遅刻か? そもそもこういうボス戦って、相手が知能ある生き物だったら部屋にいる事自体がおかしいもんな。ボスだって飯を食ったり生活してるはずだから遅刻してもおかしくはない。特に親父だし。

 けど、遅刻じゃなくて演出だったみたいだ。目の前の天井付近に気配がする。黒い影がゆっくりと降りてくる。急に上から光が射す。光の帯の中をゆっくりとあぐらをかいたきたねーおっさんが降りてくる。うげっ、奴はパンツ穿いてない。逆光で良かった。汚物は見えない。


「待っていたぞ。キラ・シドー」


 親父が口をモゴモゴしながらなんかほざいてる。食ってるのは丼飯だと思われる。相変わらず緊張感ない奴だ。食べてるのに声がするって副音声かよ。そして親父は人の背丈くらいのとこで止まり浮遊している。仲間たちを手です制して前に進む。


「三分間待ってやる」


 言いたくて言ったわけじゃない。ごはん粒つきの唾をかけられるのは嫌だからだ。


「その必要はない」


 親父は大口を開けると丼を丸呑みした。今、ゴムみたいに口が伸びたような。やっぱコイツは人間じゃねー。


 シュシュン!


 親父の右手が動き二本の箸が飛んでくる。それを手の甲で弾くが、なんかベトッとしたものがついたのがやだ。


「食らえ! サウザンドニードル」


 初っぱなから必殺の無限大マジックミサイルを放つ。巨大な光の柱が親父へと伸びる。




 


 読んでいただきありがとうございます。


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