失われた記憶 38
「エル、危ないっ!」
僕は一瞬、暴漢に立ち向かう事も考えたが、僕は弱いから、エルを守る事しか頭になかった。
「えっ、な、なにっ?」
僕に突き倒されて吹っ飛ぶエル。
「うぐっ」
背中が熱い。なんだ? 何が起こった? え、なんだこりゃ? 僕のみぞおちから何か生えている。キラキラしたもの。包丁?
「ひっ、誰か!」
知らない女の子の声がする。
「ああああああっ」
知らない男の声がする。
これ、僕、死んだな。心臓一突されてる。貫通してるよ……気が遠くなる。目が、目が霞む……
『私を庇ってくれたのね。ありがとう』
ここは病室なのか? 僕は体が全く動かない。口には何かはまってて声も出せない。エルがベッドの足元で僕を見てる。その体は半透明だ。後ろの壁が見える。おかしい。エルを見るたびに起きてたドキドキがない。あ、僕、息してない。もしかして心臓も? おかしい、目の前の壁の時計の秒針が止まってる。エルの口は動かないのに声が聞こえてくる。
『ごめんなさいね、この世界ではリザレクションは使えないの。使えるのはリーンカーネーション。あなたには生まれ変わって貰うわ。わたしにできるのはそれだけ。そうね、せっかくだから私達の役には立たなさそうな、この神の神晶をあげるわ。境目の神、みんな口にするけど知られてない神。これがあなたのこれからの新しい人生の助けになる事を祈るわ。ありがとう。そしてさようなら』
エルは近づくと、僕の手の中にキラキラと光る石を握らせた。それは僕の手の中で砕け散り、光となって僕の体の中に吸い込まれた。
『言い忘れてたけど、神晶は強い思いや願いを叶える力にもなるわ。わたしの魔法が発動するときにあなたの願いを強く念じたら叶うかもしれないわ。では、本当にさようなら』
エルの手から出た強い光が僕に吸い込まれていく。そして、僕は強く願った。『また、彼女に会いたい!』と……
エルの全てが僕を癒してくれた。ただ彼女のためになにかできればそれで良かった。僕は人生の最後で彼女を助ける事が出来た。それだけで満足だ。けど、僕は強く強く願ったのだ。
『彼女にもう一度会いたい』と……
『彼女の笑顔をもう一度だけでもいいから見たい』
僕の願いはそれだけだった。
あ、ついででもいいからイケメンになって女の子にチヤホヤされてみたいな。
逆でもいいな、アイドルみたいなめっちゃ可愛い女の子になって、世界中の人々からチヤホヤされるのもいい。出来れば胸は大っきい方がいいな。痩せてて巨乳、最高だ。
その願いを神晶が叶えてくれたんだな。ラファエルとは再会したし、イケメンで痩せてて巨乳な可愛い女の子になった。そうか、変身体質は僕の願いを叶えたものだったんだ……
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