失われた記憶 37
ここは十字路、そこにお地蔵さんがあるって事は事故が多いとこなんだろう。都市伝説かもしれないが、人が三人以上亡くなったとこにはお地蔵さんが設置されるって聞いた事がある。僕はバス停のベンチに腰掛けてお地蔵さんを観察する。顔は見えなく、澱んだ闇がある。何も起こらない。けど、なんかあるはずだ。僕はこの十字路についてネットで検索してみる。
ヤバすぎだろ。ここ。昔かつて、ここにあったデパートで大火災があって、煙に巻かれた人々がビルから飛び降りた場所らしい。その後、ここでタクシーの運転手が幽霊を乗せる事が多発して、ここではタクシーの乗り降りが禁止されたそうだ。そして、近代では何故かここで包丁を持って暴れる人が数年おきに発生している。近くでは2年前に外国人が包丁を持って、通行人に切りつけるという事があった。その外国人は、ただむしゃくしゃしたから暴れたそうだ。街中に近い普通の場所なのに濃すぎるだろ。鎮魂のためにお地蔵さんが置かれてるそうだけど、そのお地蔵さんがおかしい。もしかして、僕は触れてはいけないものに関わってるのか? 一瞬エルに連絡しようかと思ったけど、そんな都合良くなんか起きたりするわけないと思って、地蔵さんを観察する事にした。
しばらく座って見てると、地蔵さんの顔の闇がまるで雲が流れていくかのように移動し始めた。闇が取れた地蔵さんの顔は無い。首無し地蔵ってやつなのか? その闇が流れ着いたのは一人の男の後ろ。闇が膨れ上がり人形に一瞬なった。骸骨のような頭部に大きな鎌を手にしてる。
「ひいっ」
つい声が出る。あれはもしかして、死に神なのか? 逃げよう。そう思い立ち上がるが、闇から目を離せない。視界から外したら襲われるような気がして。闇が男に吸い込まれていく。その男がごそごそと持ってる鞄から何かを出した。光を照り返すギラギラしたもの。包丁? いやそれより長い。あ、あれって任侠映画とかでよくみる武器、ドスってやつじゃないか? なんでそんなん鞄に入ってんだよ。げっ、男はドスを舐めてる。しかも刃を。怖っ! スプリットタンになってる。口から舌を出し、血を流しながら男は走り出す。あれは絶対正気じゃない。僕は何が起こってるのかわからなかった。けど、気がついたら走り出したていた。男が走って行く先には、よく見知った顔、エルがこっちに向かって歩いてきてるのが見えたから。隣の女の子と話してるようで、こっちに気づいてない。
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