失われた記憶 36
「やっぱ、あたし的にはミセスよりミルクが熱いわけよ。のるっていうか、体動くじゃん」
エルの声が聞こえる。なんで歩きながら話してる女子高生の声ってデカいんだろう? 周りにも聞かせたいのか? それにしてもミセスとミルクってなんだ? 既婚婦人のミルク? 母乳か? 母乳が熱いのか?
「いやいやいや、ランキングみてみ、ミセスが上よ、いつも」
もう一人が反論してる。
「そりゃ、ミセス推しにはジジババもいるからだろ。うちらの周りじゃアーティストはミルク一択じゃん」
推しって言葉が出てるって事はアイドルなのか? アーティストって言ってるし。多分ここでのアーティストはミュージシャンって意味だろう。なんかアーティスト=ミュージシャンって図式はあんま好きじゃない。アーティストって言ったら画家だって漫画家だって小説家も含むと思うんだが、好きなアーティストって聞かれたらみんなミュージシャンを答えるのが納得いかない。まあ、納得いかなくても世間はそうだから、しょうがないが。
歩いてる三人を見てる。あ、エルがこっち向いた。いや、視線が通り過ぎただけだ。まるで、僕を風景の一部のように見た。なんでだ? 友達と一緒だからか? 確かに僕は冴えない成人男子だ。けど、全く知らんぷりは堪える。けど、エルは微塵も僕に興味を持つ事なく歩き去った。なんか悲しいと言うより虚しい。たしかに僕は友達に紹介し辛いかもしれないけど、目配せなり何なり方法はあったはずだ。たしかにJK三人と絡んだら僕はキョドる。だけど、なんか釈然としない。僕は買い物って気分じゃなくて、そのまま翻して帰宅した。
そして、エルが言った一週間後。なんか捻てしまった僕は前日に用事があるから、ご飯は無理ってメールいれてしまった。別に用事があったわけじゃないけど、気分だ。やっぱ僕はエルとは住む世界が違くて、会うのは双方にとって不利益なんじゃって思い始めたからだ。そして、僕はやることないけど、エルがもしかして家にきたら気まずいから、行く当てもなく家を出た。
そして、しばらく何も考えずに歩いていたら、道の片隅にあるお地蔵さんに目か止まった。地蔵さんの頭が無い。いや見えない。頭のとこが真っ黒で、まるでそこだけが夜みたいになってる。不自然だ。他は普通に日が照ってる。もしかして、これって、マナ的なものなのか? この前見た神のキラキラの反対なのか? エルは見たら自分に知らせろって言ってた。けど、僕はそれを無視して、何が起こるのか確かめたくなった。
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