失われた記憶 33
「もしかしたらキラならって思ったけど、ダメだったか。私も開けてみよう」
エルが無表情でガチャ玉を開ける。犬のキャラだ。それをしまうと、エルは黒袋ガチャを引いてる女の子たちの方を向く。ああ、やっぱり、僕の尻ウサギじゃ不満なのか……ん、なんだあれ? 黒袋がキラキラしてる。それに制服を着た女の子が手を突っ込んでる。そして玉を手に開ける。その玉から光る煙が立ち上がる。え、僕は幻覚でも見てるのか?
「やった。欲しいのゲット」
女の子がピョンピョンはしゃいでいる。煙は人の形になり、女の子を慈しむような笑顔で見つめてる。え、女神。煙の女神の形が崩れたと思ったら煙が勢いよくこっちに向かってくる。エルを守らないと! 隣のエルを見ると、突き出した右手に水晶みたいなものを握ってる。それに煙が吸い込まれていく。何が起こってるんだ? 煙は全て水晶に吸い込まれると、透明だった水晶が金色に変わり、それをエルはポーチに入れる。
「無事ゲットしたぞ。帰るぞ」
「ああ、うん。今のは?」
「後で説明する。キラみたく視える者も居るかもしれんから、早く離れるぞ」
背を向けるエルに僕はついていく。
「これは『神晶』だ」
エルは黄金色の水晶のようなものをテーブルに置く。
しばらく歩いたあと、寂れた喫茶店に僕らは入った。今は僕たちしかいないが、もう少しでランチタイムだから人が増える事だろう。
「その『しんしょう』って何なの?」
「んー、これはマナの結晶のようなもんだ。実体があるように見えるが、実体はない。見えるのはマナが見える者だけだ。そのマナの結晶に、この世界の人々の信心、要は神とかを信じる心を封じ込めたのが『神晶』」
「え、じゃ、さっきのって神様だったの? それをこれに入れちゃったの」
「多分、上手く伝わってないと思う。入れたのは神自身じゃなくて神の力。ほら、よく、運否天賦な事するときには神に頼むだろ。あれ、平家物語、『南無八幡大菩薩、我が国の神明、日光の権現、宇都宮、那須の湯泉大明神、願はくは、あの扇の真ん中射させてたばせたまへ。これを射損ずるものならば、弓切り折り白害して、人に二度面を向かふべからず。いま一度本国へ迎へんとおぼしめさば、この矢はづさせたまふな』」
エルが歌うように古文を諳んじる。それは知ってる。学校で暗記させられた。那須与一が舟の上の扇を狙うとこのセリフだ。僕は覚えてないけど。覚えてるのは『祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり』だけだ。
「そういう感じで、日本では困った時の神頼みが昔から行われてる。あのガチャ売り場では、数多くの人が祈ってきた。その祈りが形になったとこで、その力をこれに封入したって訳だ」
なんかわかったような、わからないような。
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。




