失われた記憶 32
「ここから一つ引いてください」
ガチャショップの店員さんに言われて僕は黒い袋の中に手を突っ込む。なんか違法のものの取引みたいだな。そして、その中の玉を確かめ、これだと思ったものを掴む。そして袋から引き出す。
ガチャのレバーはぶっ壊れ、なんか偉い人っぽいオッサンが来て鍵を開けて、マシンの前の扉を開き中をいじる。僕はドキドキしながらオッサンを見る。これって弁償させられるんじゃないか? エルのお蔭で財布の中にはお金はあるけど出来ればこんな事で使いたくない。多分ガチャのマシンって二三万はするんじゃないか? 一万以上するガチャは高すぎだろう。
「この機械ばかりつかってからプラスティックの部品が疲労で折れてしまったみたいですね。まあ消耗品なんでしょうがないでしょう」
オッサンが女性の店員さんに言う。それに店員さんが応える。
「じゃ、ガチャ、治んないんですか」
「治りませんね。パーツないですから、他に空いた機械はありませんか?」
「ええーっ、他は全部いっぱいです」
「じゃ、どれか入れかえましょうか?」
オッサンと店員さんがグダグダしてるのに、僕の後ろに控えるガールズはいたたまれなかったみたいだ。
「ちょっ、暇じゃないんだから、早くしてよ。どんだけ待ってると思うの?」
振り返るとヘソ出した姉ちゃんがイキってる。怖え。
「好きなの引かせてくれたらいいんじゃね?」
ヘソ出したぽっちゃり姉ちゃんもイキる。
「待ってください。これでどうですか?」
店員さんがもう一人、黒いゴミ袋を持って駆けてきた。そして、僕の後ろの姉ちゃんたちが急かすので、ガチャの玉を黒いゴミ袋に入れたのを引く事になった次第だ。
「うおっしゃー」
掴んだ玉の中身を見て、僕は叫ぶ。半透明の玉の中には間違いなく、うさ耳を生やした奴が入ってる。
「キラ、はずいから叫ばない。じゃ私」
エルが店員さんに3百円渡してゴミ袋に手を突っ込み球を引く。
「後ろ、並んでるから、そっちで中身見よ」
僕らは脇で、ガチャ玉を空ける。そういえば、昔のガチャ玉は、半分以下透明で固いプラスティックで、もう片方は色がついた柔いプラスティックだったな。けど、今のは一体形で全部柔いプラスティックだ。貼り付けてあるセロテープをはがして、ツメを開いて玉を開ける。中にはアクリルのキラキラなめじるしチャーム。うん、ウサギだ。勝ったな。
「サイバ〇マン?」
つい言葉が漏れる。
「それ古すぎ、今なら『おし〇たんてい』ね」
僕の引いたウサギは、丁度顔の真ん中のとこに割れ目が出来ている。俗に言う不良品って奴だ。形にアクリルを入れる時に、ちょうど切れ目が入ってんだろう。可愛らしいウサギの顔の真ん中にクラックが入ってる。しかも滑らかに。まじ、尻の割れ目みてーだ。泣きそ……
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。




