失われた記憶 31
僕には今重大な悩みがある。エルと僕、どっちが先にガチャを引くかだ。今は男らしさをアピールするために女子の群れに怯まず僕が先に並んでるが、僕がガチャを先に引くのは一長一短だ。
シミュレーションしてみよう。まず第一に有り得るのがガチャのマシンの誤作動。昔から、僕はよく電子機器とかを暴発させる。自販機にお金を入れてもジュースが出てこないとか、携帯のアプリが謎のバグを起こしたりとか、飛行機の金属探知機で金属を持ってないのにピーピーなりまくったりとか。昔の事を思い出す。あれは世界史の授業で第一次世界大戦について習ってたときの事だ。先生がその当時いろいろな機械の故障はグレムリンという悪戯好きの悪魔の仕業にするというジョークや都市伝説みたいなものがあったという話をした。その時クラスメイトの大半が僕を見た。それから陰で僕はグレムリンと呼ばれてたらしい。影が薄かった僕だけど、悲しい事に、パソコンを病気にしたりとか、電子体温計をお馬鹿にしたりとかの伝説だけは広まってたらしい。
要は、先に僕がガチャしてグレムリン効果で壊したらまずいなって事だ。壊れなかったにしても、多分僕が引くのはハズレだ。けど、ハズレなら先に引いた方がイメージがいいような気もする。次にエルが僕よりいいものを引くはずだから。けど、逆に、エルが先に引いて欲しいのを引けず、その後僕が目当てのものを引いた方が格好いいんじゃないだろうか? けど、待てよ、よく考えると、引くものは、未来はもう決まってるんじゃないだろうか? 何もしなかったら先に引くのは僕、という事は僕とエルで先に引く方がハズレだ。しかるに僕が後で引けばエルにかっこいいとこ見せられそうだ。よしっ!
「エル、レディファーストだ。ガチャ、先に引きなよ」
「いや、このままでいいよ。キラに先に引いて欲しい。私はこういうのはあんまり運が良くないからな。出来れば私の分も二回引いて欲しいな」
なんと、予想外、どうするか?
「いやいやいや、知ってるでしょ、僕のリアルラックの低さ。エルが先に引いて僕が後で引くよ」
「キラ、もう順番だよ。ほら、みんな待ってるから、引きなさいよ」
え、まじだ、もう僕の番。
「え、えっ」
いかん、エルの後ろで待ってる女の子たちが急げよ的な目で見てる。これは引くしかない。意を決し、3百円入れてガチャのレバーを回す。
バキッ!
なーんか、やーな音がして、レバーが回る。やたら軽い。あーあこりゃやっちまったなー。
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