失われた記憶 30
まじ、働きづめで、その合間に書いてます。来月は少しは余裕できると思うので、『荷物持ち』の方も再開したい次第です。
エルと一緒に並んでいるが、居心地悪い事この上ない。
居ない、男が、僕入れて3人しか!
若いカップルと、冴えないサラリーマン風のオッサンだけだ。カップルの男性は彼女の付き添いなんだろう。高校生くらいか? イチャつきやがって。死んだ目をしたサラリーマンのオッサンは多分僕と同じ疎外感を味わってるんだろう。子供にパシらされてるのか? あとは女の子女の子女の子。なんかものすごく甘い香りがする。化粧品、シャンプーやリンス、制汗剤、洗剤、柔軟剤などの香料が混じった匂いだろう。なんか懐かしい感じ。どこで嗅いだんだろう? 頭に浮かぶ記憶は多分銭湯の脱衣所。おぼろげで鏡がたくさん並んでたことしか思い出せない。古い昭和っぽい感じだ。けど、いつ僕は女湯に足を踏み入れたんだろう? 子供の頃に母さんに連れられて入ったのか? うーん、詳しく思い出せない。列に並んでるのは小中高校生の女の子。なんか可愛い女の子が多い気がするが、僕はこの理由が推測できている。昔と違って今はメイクの技術とかがネットで簡単に手に入る。昔は職人芸だったのが誰でも使える。動画で、冴えない姉ちゃんや下手したらそこらの兄ちゃんが美人に変身するものもたくさんある。そのメイク力の向上が可愛い女の子の増加に繋がってるんだろう。けど、一つ欠点はみんな同系統の顔に見えがちだ。
11時になって列が進み始めた。店員さんが引けるのは一人一個って言ってる。めじるしチャームの人気3種類のガチャのうち一個。こんなに並んで一個とはなんか虚しさを感じるが、お蔭で僕らも引けそうだ。
「エルさ、エルはなにが欲しいの」
「んー、サン〇オ」
「サ〇リオのなに?」
「ク〇ミ」
「クルミ?」
そんなキャラいたか?
「クロ〇」
ん、そんなキャラ知らないな。ネットで調べると黒い頭巾を被ったウサギで、『世界ク〇ミ化計画』という世界征服を狙ってる生き物らしい。可愛らしいのに剛毅だ。
「アクリルのキラキラしたあの子が欲しい」
エルって、なんかそういうものに興味が無さそうなのに欲しいって言ってるって事はガチなんだろう。気合いを入れねば。
目の前では女の子たちがキャッキャ言いながらガチャを引いている。ここは天国なのか? コンビニの中とは世界観が違いすぎる。まあ、けど、僕だけだったらこういうとこは萎縮して通り過ぎるだけだから、またエルに新しい世界を見せてもらってる。エルは目を細めて厳しい目つきでガチャを引く女の子たちを見てる。本気だ。本気で欲しいんだ……
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