失われた記憶 29
「そんな、素っ頓狂な顔をするな」
んー、顔に出てたか。そんな変な顔してたのか? 自分が十人集まった事を想像してただけなのに。
「キラでも使える魔法を今度伝授してやるから。そうだな、好きな人とよく目が合うのか、茶柱が立ちやすくなるのどっちがいいか?」
ん、それって子供のおまじないか?
「好きな人の魔法は、悪意感知の初歩で、茶柱は、ラックアップの初歩だ。ずっと練習してたら、少しは効果あるものになるかもしれない」
「それってすごくない? 両方とも教えてよ」
正直魔法なんてどうでもいい。この時間があるのと、また、こういう時間ができるのが嬉しい。けど、好きな人と目が合う魔法はもしかしたら僕の気持ちがエルに伝わってしまうのでは? 無性にドキドキしてきた。治まれ僕の鼓動!
「なんだ、顔が赤いぞ、ハァハァ言って、そんなに魔法が楽しみなのか? けど、期待するなよ。発動するには膨大な練習が必要だからな」
え、茶柱立てるのに膨大な練習がいるの? なんか割に合わないような。
それから、たわいない話をして、コーヒーおかわりしたりしながら時間をつぶした。僕には話せる事なんてないから、ほぼずっとエルが話してた。僕に合わせてくれれるのか、食べ物の話が多かった。エルは若いのに、いろんなものを口にしてて、僕よりも食べてる料理の種類は多い。もしかしてお金持ちの子なのか? そして、2時間以上カフェで粘ったけど、そんなに長くは感じなかった。エルは一般常識以外は物知りさんで話も面白い。可愛くて、頭が良く、知識があり、謎の力の魔法も使える。しかも、それで驕ったとこもなく、コミュ力も高い。俗に言う完璧超人ってやつだな。僕とは大違いだ。少し劣等感。だけど、ガチャに付き合うというたいした用事ではないが、彼女からはお願いされている。その事が僕は嬉しい。
カフェを出て、駅の複合施設へと向かう。カフェでは昨日の意趣返し、エルが席を立った隙にお会計は僕がやった。昨日と比べたら多分微々たる金額だけど。人は日々成長するものなのだ。
目指すは複合施設にあるガチャがたくさん集まったとこだ。辿り着くともう行列。これって大丈夫なのか? 50人以上もう並んでるぞ。僕らの分まであるんだろうか? ネットで調べるとガチャの球数はだいたいワンロット50個らしい。これは並び損になんじゃないだろうか? 僕のリアルラックなら有り得る。
「ねえ、これ、並んでも引けないんじゃないの?」
「そう思うだろ。けど、見えた」
エルは指の輪っかで行列の方を見てる。そのクールな表情の口元が緩んでるのは何故だろう?
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