失われた記憶 28
時間がまだまだあったので、モーニングをやってるカフェに行く事になった。僕にはそういう思考回路は無いから、当然エルの提案だ。カフェは古色蒼然とした、大正くらいからあるんじゃないかと思われるような作りだ。まあ、そういうコンセプトで本当は新しいかもしれないけど。なんとモーニングでは、コーヒー一杯の値段で、トーストかゆで卵がついてる。僕はゆで卵、エルはトーストを選んだ。なんかこれってめっちゃデートっぽい。当然僕はカフェデビューだ。ゆで卵は剝いてあってシルバーのケースに入ってる。なんかオーブみたいだ。これってどうやって食べるのだろうか? ウケ狙いでそのまま齧り付こうかと思ったけど、誰得なので止めた。スプーンが添えてあるから、それを使う。ゆで卵の味は普通で、塩振って食べた。トーストにしとけば良かったと思った。エルがめっちゃ美味しそうに食べてるから。いや、逆だったとしても同じように思ってたかもしれない。エルはなんでも美味しそうに食べるから、ゆで卵も魅力的な食べ方をしたに違いない。正解は同じものを頼むだったな。コーヒーは少し酸味がある複雑で濃厚なものだった。僕はあまり酸味があるのは好まないんだけど、めっちゃ美味しく感じた。この美少女を見ながらカフェで飲んでるというのが補正をかけてるのかもしれない。とは言っても、僕はブラックはあまり好きじゃないから、一口飲んだあとは砂糖とミルクをドバドバ入れるから、コーヒーの味はあんまり関係ないんだけど。
店内はポツポツ人がいる程度で、僕らは隅に座ったので周りには誰もいない。ここなら昨日の事を聞いても変な事を話してる人には見えないだろう。衆人環視の中、魔法とかの話をしてたら、変な人にしか見えないからな。しかも十代半ばにしか見えない美少女ともさい男だから、援交とかにしか見えないと思う。下手したら通報もんだ。
「昨日のあの魔法ってどういう仕組みなの?」
「仕組みと言うと?」
「いや、僕にも使えないのかと思って。誰にでもそのマナってあるんでしょ」
「んー、まあ、話してもいいか。十分巻き込んでるからな」
巻き込んでる? なんか違和感。僕にはマナが見えるというのを教えてもらったのと、代打ちで大金をもらった。これって僕にとってはいい事しかないのに、なんかネガティブな言葉な『巻き込んでる』はそぐわない。
「そんな怪訝そうな顔するな」
あ、また顔に出てた。
「この世界のマナは少なすぎるから。結論から言うとキラは魔法を使えない。まあどうしてもと言うなら、キラくらいの資質がある者を十人ほど集めて、ちゃんとした式をふみ、補助する施設を作ったらなんとかなるかもしれんが」
え、僕を十人集める? なんか嫌だ。自分の事だけど、絶対にみんな黙りこくってるだけで協力なんて無理だ。
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