失われた記憶 23
「動かない! 動かない!」
レバーを動かしてみても液晶画面は暗転したままだ。えっ、バグっちまったのか? 僕が原因じゃないよね? もし壊して弁償とかなったらどうしよう。電子機器っぽいから携帯くらいの値段はするんじゃないか? 今日の勝ち分が飛んじまう。
「キラ、キラっ」
エルが肩を叩く。
「どうしたの?」
振り返ると、エルは台を指差してる。
「え?」
画面には真っ黒な中に、風化した岩に刻んだような金の文字が……
『左を押してください』
え、左? ボタンの左を押す。
『デュルルルルルン』
中、右と押す。
『デュルルルルルン、デュルルルルルン』
それからファンファーレみたいな音がなり、画面には大きな『GODs』の字がそしてリールでは『GODs』の絵柄が揃ってる。
「なんだ、7じゃないんだ。これってバーでしょ?」
あ、エル、ゴッズの絵柄が黒いから勘違いしてるみたいだ。スロットでは、7かバーの役物絵柄が揃うと、ボーナスに入って出玉が増えるものが多い。普通のスロットでは黒い役はバー、赤い7のビッグの3分の1くらいの出玉だ。
「いや、なんと、これプレミアムで、16000分の1くらいの確率でしか揃わなくて、普通の台の七の四五発分くらいの威力あるらしいんだよ」
「えーまじか。そんなに凄いのか? キラがエキサイトしてる未来が見えたからこれ選んだんだけど、もしかして、めっちゃ出るじゃないか?」
「そうだよっ! あとは、僕のリアルラック次第だけど」
『デン、デン、デン、デデデ、デンデンデン♪』
台から、重厚な行進曲みたいなのが流れる。なんと画面の中に城が浮かんでる。フランスの画家ブリューゲルの描いたバベルの塔みたいな城だ。ブリューゲルのバベルの塔って、バベルの塔と聞いたら真っ先に頭に浮かぶ絵だ。確か教科書にも載ってた。僕は好きな絵なんだけど、なんか教科書に載ってたってだけで、絵でも小説でも魅力が半減するように思えるのは気のせいだろうか? あ、勉強が嫌いだからか。
浮いた城を見ながら、ナビ通りにボタンを押していく。ジャラジャラとメダルが増えていく。ヤバい。めっちゃ上がる。まるで神々が行進してるような曲に天空の城。なんか世界を征服でもした気分だ。そして、その画面が終わり、普通のボーナス画面だと思われるものに変わる。
『アアーーーメージーングレース♪』
なんと台が高らかと歌い始めた。数台先のボーナスに入ってる台を見るけど、なんか違う曲が流れてる。これって特別なんじゃ?
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