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 失われた記憶 19


「ねえ、これどうすればいいの? 玉、出ないよ?」


 確かこの丸いレバーっぽいものを回したら玉が出る。そう思って回すが何も起こらない。


「お主、お金はいれたのか?」


「あ」


 玉を買わないと玉が出ない。当たり前だな。こんな事ならアミューズ施設とかにあるパチンコ台で遊んどくべきだった。今日は時間がなかったから、パチンコ台については流し読みていどしかしてない。大まかなルールはわかるけど、初歩的な事を学んでなかった。とりあえず財布からお金を出す。台を挟んで右と左にお金を入れると思われるスリットがある。


 ど、どちらだ?


 ここで間違えたら恥ずかし過ぎるぞ。左の方が近いけど、右利きの人の方が多いから右の方がが入れやすいし。けど、間違ったら隣の人にお金が渡るわけで。だが、僕は自分を信じる。震える指で出したなけなしの一万円を左手のスリットに差し込む。


「ま、ままよ……」


 普段生活してて、まず使わない言葉を使ってみました。


「ん、どうした。マヨネーズ飲みたいのか?」


 なんと、こう切り返されるとは。ママが恋しいのか? とかならすぐに思いつくが、マヨネーズは盲点だった。けど、エルなのでボケじゃなくて本気かもしれない。


「いやー、マヨネーズじゃなくてね。『ままよ』ってもうどうにでもなれって意味だよ」


「ふふっ。それくらい知っとるよ。お主があまりにも緊張してるから解してやろうと思うてな。まだ、始まってもおらんのだから、手に汗握るのはこれからだぞ。ショックで気を失ったりするなよ」


「あ、ありがとう。大丈夫だよ。多分。じゃ、頑張るよ」


 お金が消えて、下の液晶に金額が表示されてる。手元にお金がないから、なんかもう一万円溶かしてしまったような気になる。レバーの上に玉貸って書いたボタンがあるからそれを押したらジャラジャラと台の上に玉が出てくる。そして止まる。

 ヌルヌルするレバーを回す。げっ、これ僕の手汗か? 玉が勢いよく打ち出される。そしてそのまま反対側まで飛んでいく。や、やばっ!


「何やってんだ。強すぎ、強すぎ」


「えっ」


 緩めても、まだ強い。これってどうすればいいんだ? 玉って言わばお金だ。そのお金が無駄に消費されてるのが僕を焦らせる。力を抜くと、今度は弱すぎて玉が戻ってくる。


「玉が弱いー。玉が弱いわよー」


「えー、なにこれ、思ったようにできないっ」


「ちょっとまた強いー」


「ひっ、ととっ」


「弱いわー」


 いかん、コントみたいになってる。落ち着いて、少しづつ動かすんだ。


「こっ、これでいいかなー」


 やっと盤面上に玉が流れ始めた。けど、どうすればいいんだ? 液晶ではデモ画面が流れ続けてる。確か液晶の数字が揃わないと玉が増えないんだよな。これってただただお金を垂れ流してる?


「なーにやってんのよ。ここ、ここを狙うのよ」


 椅子から立ち上がってるエルが、台の真ん中の玉が潜れる輪っかみたいなのを指す。


「うん、わかった。けど、どうすりゃいいの?」


「もう少し強く。ちょっと、ちょっと。そこっ」


 一番上にある釘の少し右くらいに玉が当たって、風車みたいのを通って真ん中に流れ始める。そして、その中の一個が潜った! 液晶が動き始めた!

 


 読んでいただきありがとうございます。


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