失われた記憶 16
「もっと近くに店あったんじゃないの?」
僕らはJRで郊外に向かってる。いつもは混んでる列車も今の時間はガラガラだ。
「それには二つの理由がある」
ラファエルは下向きピースをする。それって使い方間違ってるんじゃないの? なんか若作りしてるおばちゃんが必死に時代に追いすがろうとしてるように見える。
「一つは、パチンコ店でもなんでも、郊外の方が地代が低いから家賃が安い。家賃の差はばかにならないからな。だから、郊外の方が立派な店が多いし、お客さんに戻す金額も多いと思われる。街中のパチンコ店は猫の額にぎっしり台が詰まってるみたいだが、郊外は広々としてて、リラクゼーションルームみたいなものすらあったりするからな」
まじか、郊外の方が勝ちやすくて快適って事か。それなら移動もやむなしだな。
「あと、もう一点は、私は思ってるよりも顔が広いらしい」
む、自分の事なのにあんまりわかってないのか? 僕は問答無用に顔が狭い。ていうか、近所の猫くらいしか知り合いはいない。なんか悲しくなってきた。
「一応変装はしたが」
一昔前のギャル装備にデカグラサンにピッタリマスク。
「ふとした拍子に私とバレて動画拡散とかされたらしゃれになんないからな。だからしゃべり方も今から変えるわよ。イメージはセクシー大人女性の規範、ふじこちゃんよ」
やー、もう今の状態でロリ系美少女のラファエルさんってわかる人いないと思うよ。けど、さらにしゃべり方を変えるのは賛成だ。なんかいつもオッサンみたいな話し方だもんね。けど、ふじこちゃんって、『ふーじこちゃーん』『ルパーン♡』のふじこちゃんか? 最近あんまり聞かないな。昭和オタクなのか? まあ、いいけど。
「あとさ、今さらだけど、なんでパチンコに行きたいの?」
「行くんじゃないわ。仕事よ」
「仕事?」
「私の中では労働の対価としてお金を貰うのは仕事よ」
「やー、やー、ギャンブルって当たるも八卦当たらぬも八卦でしょ」
「フフフフフッ。それは違うわね。あるのよ必勝法」
「必勝法?」
そんなのあるはずがない。あるなら全国のパチンコ店は潰れてるはずだ。パチンコやスロットって乱数による確率で制御されてるはずだ。必勝法と言えば、昔、体感器ゴトっていうのが世間を賑わせてたな。確かパチンコスロットの抽選はルーレットを回してるようなもので、そのルーレットが回る周期に合わせて抽選させると当たりやすいってものだったな。昔はそのルーレットのようなものの周期が数秒後とかのものがあったから成立してたけど、今は1秒に満たないので無理らしい。
「何、考え込んでるのよ。私だって必勝法があるって言われても信じられないわ」
ラファエルが近づいてくる。
「だ・か・ら」
うへっ、僕は今、美少女にツンツンされてる。変装してるのが悔やまれる。エッチ動画で女優さんがマスクしてるような気分だ。
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