失われた記憶 15
「ちょっと、手ー、手ー、手ー」
ラファエルがグイグイ引っ張ってくる。痩せてるのに力強いな。
「てー、てー、てー、ってうるさい奴だな。鶏かっ」
ラファエルが立ち止まって振り返る。
「鶏は、クケッ、トュォー、トュォー、トュォー、トュォー、コケッ! でしょ」
僕は頭を前後に揺らしながら鶏の真似をする。どうでもいい特技だけど、自分では上手いと思っている。実際に鶏に声をかけたら返事してくれるし。
「おお、中々見事だな。お主、鶏が好きなのか?」
「逆だよ、昔、飼育小屋のでっかい奴に襲われてから、嫌いて言うか怖かった。小学生一年くらいだったから、奴はこれくらいの大きさがあったなー」
ぼくは自分の目高さに手をかざす。奴のオーラでデカく見えてたのかもしれないけど、当時の僕には巨大な猛獣に見えた。それが前後左右に首を揺らしながらくちばしで突っついてきやがった。ガードしようとうずくまったのが更に悪かったんだろう。頭や背中を突っつかれ、蹴りっぽいものを食らって、さらに上に乗られて踏みまくられた。血はでてなかったらしいけど、めっちゃ痛かったのを覚えている。
「まあ、でも好きだよ食べるのは」
「私も食べるのは好きだぞ」
「まあ、鶏の話はここまでで、そのー、手を離して貰えたら嬉しいかなと」
「えー、まじか。普通、お主ほどの年齢の男子は女の子に手を握られるのは嬉しいんじゃないのか?」
確かに本当は嬉しいんだけど。
「やー、僕くらいの年の男が、ラファエルさんみたいな若い女子と手ー繋いで歩いてたらね、目立つし、警察に見られたら不審尋問されかねないかなって」
「いや、私は今は成人してるように見えるだろ。それなら問題ないだろ」
「まあ……そうだね。そう言えば、ラファエルさんって実際は幾つなの?」
「……んー。多分18才?」
「何で疑問形なの?」
「私は実際のところ、年齢も誕生日も知らんのだ。今度調べとくよ」
あ、もしかして踏んだ? 地雷……
「ま、いいや。じゃ、行こか」
「そうだな。私が店は探しといたから、ついてこい」
彼女は手を離す。なんかもったいない気もするが、さっきの話っぷりから、多分彼女は身分を証明するものを持ってない。もし、警察に呼び止められたら厄介だ。という事はパチンコ店で身分証求められたらどうすんだよ。
「ちょっと待って、マスクとサングラス買いに行こう」
昔はそんなの装備してる人は不審者だったけど、今のご時世はごまんといる。更にラファエルの変装を強化しとかないと百パー店に入れないだろう。
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