失われた記憶 13
「これを見るのだ」
会食も終わり、なんか食事って呼ぶとただ御飯を食べるだけみたいだから僕は会食と呼ぶ事にした、お茶など啜ってるときに彼女がポーチから雑誌を出した。
「え? 『爆勝パチンコ・スロット』?」
カラフルな表紙に様々なパチンコやスロットの遊戯台の写真。雑誌ってば最近あんまり見なくなったな。しかも、内容がパチンコ・スロットって。どう見ても彼女は18才以下だろう。パチンコ店に入ったら身分証を提出させられるんじゃないか? ちなみに僕はパチンコ店には入った事すらない。その前に賭け事全般全くしない。僕は壊滅的に運が悪いから負けるのが確定事項だ。それにそもそも彼女とパチンコ店というのがイメージ的に結びつかない。これはどういう事だろうか?
「これを見てルールを覚えるのだ」
彼女が差し出した雑誌をつい受け取る。
「え、覚えてどうするの? 僕はやった事ないよ」
「だから、やってもらうから覚えるのだ」
うう、噛み合わないな。
「いやいや、ギャンブルは良くないよ。そもそも、パチンコって勝てないようにできてるんでしょ? そうじゃないと、あんなに綺麗な建物作ったり、たくさん従業員雇ったりとかできないよ。しかもさ、パチンコ店って一等地にある事多いでしょ。その家賃もまかなってる事考えたら、めっちゃパチンコ店稼いでるんだって。そのお金はお客さんから出てるって事は、負けるようになってるんだって」
何を思って彼女がパチンコに興味もったのかわかんないけど、引き留めるためにマイナス材料をつらつらと語ってしまった。僕の口からこんなに言葉が出るのは久々なんじゃないか。彼女が悪い道に走るのを止めないと。
「そんなのやってみないとわかんないだろ。私は負けない! お主がやりたくないなら私だけでやるだけだ」
げっ、僕の呼び方が『キラ』から『お主』に格下げされた。私は負けないってダメ男かよ。ギャンブルなんて運否天賦だよね。
「ちょっ待ってよ。ラファエルさんって18才以下でしょ。お店入れないでしょ」
「私は成人しとる。だが、目立ちたくないからお主に協力してほしいのだ」
え、まじ、実は年上? いやいや、見た目中学生って言っても通じるって。それより、いかん、いかんぞ。女の子にここまで言われて引いたら、男がすたる。けど、噂ではパチンコでは数万円負けるのはザラだって言うし……
「3時間くらい後に戻ってくるから、それまでじっくり考えろ。まあ、嫌なら無理とは言わないから」
彼女は優しく微笑む。やば、可愛い。けど、その笑顔に距離を感じてしまう。
「じゃ、また後でな」
僕が混乱してる中、彼女は出て行った。僕は急いで携帯でパチンコとスロットについて調べ、ゾーンに入りながら雑誌を読んで大まかは掴んだ。早っ、もう2時間経ってる。よし、アプリを落として実践に近い特訓だ。やらねば、男は無理を通さないといけない時もある。なんとしてもギャンブルで勝ちいいとこ見せないと! そして呼び方をまた『キラ』に戻す!
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