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 失われた記憶 10


「そんな事わかっておるが、お金はあるが使いたくないのだ」


 彼女が目立ちたくないけど、旧札を使ってた理由だと思うが、状況が飲み込めないな。


「え、どういう事?」


「説明が難しいな、今、使ってはいいと言われているお金はあるけど、それは使いたくない。だから、昔、もってたお金を使ってたんだ」


 んー、いよいよもって訳がわかんない。まあ、彼女には僕には話したくない事があって、それで内容がふにゃふにゃになってるみたいだ。けど、数回しか会ってない僕を信用しないのは当然だろう。


「それより、さっき言ってた、『マナ』ってなんなの?」


「『マナ』とは魔法の源になるものだ。見えなく、この世の科学でも実証されてない力だ。心と密接に絡んでいるもので、全てのものに含まれているが、この世界ではとても弱い」


 んー、スピリチュアルな人なのか? もしかして、この後僕に海運グッズとかセールスしてきたりするのか? 一瞬、胡乱げな目で彼女を見てしまって目が合った。少し彼女の目つきが鋭くなる。


「光よ……」


 彼女が上に向けた掌の上にポワッと白い光が現れる。そしてフヨフヨと柔らかい光の球形なものが浮かんでる。


「げっ、何それ」


「触ってみろ。痛くも痒くもないから」


 彼女はもう一つの手でその球を横からゆっくり払う。手は何もないように光を素通りする。


「あ、うん」


 僕も恐る恐る球に手を伸ばす。少し温かく感じるだけで、質量を感じる事なく素通りする。前後上下左右に球を触るけど、そこには何もないようだ。


「これは光の魔法。マナを光に変換した。これは鏡に映る」


 彼女が手にした鏡には確かに光球が映ってる。


「信用したか?」


「うん……」


 光が消え、彼女が右手を僕の目の前に差し出す。ついビクッとしてしまう。その手がぼんやりと緑色に光る。


「これが私に存在するマナ。属性の影響で緑色だ。お主には見えるだろ」


「ああ、うん」


 もう片方の手にある鏡を光る手を挟んで僕に向けるが、鏡の中の手は普通だ。

 そのマナとか魔法の存在を僕は信じ始めてた。どう頭の中身をひっくり返してみてもさっきの現象を説明できる言葉がない。超常現象、超能力、魔法、そんな単語しか思いうかばない。けど、それならどうして?


「なんで、僕に、そんな大事なことを教えてるの?」


「何故かは知らないが、お主はマナが見える。お主自身のマナは無いに等しいし、今まではマナが見えたとしても気づかなかっただろう」


「そ、そうだね。今まで全く気づかなかった」


「けど、マナを潤沢に有する、私と知り合ってしまった。これからはお主はより明確にマナを捉える事ができるようになると思うし、それによる厄介事に巻き込まれる可能性がある」


「厄介事? 大丈夫だと思うよ。僕は人と関わるのは好きじゃないから」


「何を見ても聞いても我関せずと居られる人間なら、私も捨て置いたんだが、わざわざ旧札を自分の所持金と交換してくれるようなお節介だと、私もお節介を焼きたくなるものだ」


 あ、覚えてたんだ僕の事。




 読んでいただきありがとうございます。


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