失われた記憶 7
「人の手料理など久しぶりだな」
彼女は箸で、品はあるのにモリモリ食べていく。咀嚼が早いんだ。なんか小動物を見てるみたいだ。今日の御飯は白ご飯に味噌汁、サラダとハンバーグ。
「何を見ておる。お主も食え」
おお、生まれて初めて人から『お主』って呼ばれた。この娘、時代劇オタクだったりするのか? 『のじゃロリ』をリスペクトしてるのだろうか? まあけど彼女の語尾は『のだ』だから『のだロリ』? 最初は彼女は普通に喋ってたのに、いつの間にか語調が変わってる。これってもしかして少し心の距離が縮まったからか?
まあ、そのロリと言っても過言じゃない彼女を家に上げてる僕は、端から見るとヤベー奴にしか見えないんじゃ? 親戚、そう、言い訳は親戚にしよう。
「大丈夫か? お主、さっきから表情がコロコロ変わっとるぞ。まあ、私のような若くて可愛い女の子の前だからしょうがないとは思うが。もし、食欲が無いなら、ハンバーグ貰ってやるぞ」
「は、はいー」
僕は二個あるハンバーグのうちの一個をあげる。彼女はハンバーグは食べ終えている。おお、そんなに気に入ってくれたのか。
「本当にこのハンバーグ美味いな。これで食ってけるんじゃないのか?」
「はいー、たくさん、たくさん作りましたから。けど、ハンバーグ屋さんは大変です」
自慢ではないが、僕のハンバーグは自信作だ。昔バイトでしこたま作りまくった。けど、自家製ハンバーグの店は地獄だ。ハンバーグが熱で傷まないように、冷蔵庫くらいの温度の所で捏ねる。そういうとこがないとこは、ボウルに氷水を充てながら捏ねる。ハンバーグは最初にミンチを塩だけで捏ねる。肉が粘っこくピンクっぽい色になるまでひたすら捏ねる。工場とかのハンバーグは機械で捏ねてるらしいけど、ハンバーグの専門店じゃないかぎり、そんなのは大抵ない。それに、慣れると10キロ20キロくらいのミンチなら手の方が早い。機械のスピードを上げると摩擦かなにかか原因は分かんないけど少しパサついてしまう。手でミンチを握りつぶすように全力で捏ねる方が早い。機械の掃除も時間かかるし。
まあ、要はハンバーグを捏ねるというのは大変な作業だ。そして、捏ねた牛肉にパン粉や卵とかのつなぎを入れてまた捏ねる。そしてしっかり空気抜きして焼く。またこの空気抜きというのも技術がいる。ただペチペチキャッチボールしてるわけじゃなく、肉を投げる前に揉みながら投げるといい感じに抜ける。そうして苦労して出来たハンバーグはもう絶品だ。外はカリカリ、中はふんわりジューシーでしかも口当たり滑らか。全部手作業の方が、ここまで上手くいく事が多い。
「…………」
彼女が僕のハンバーグを見てる。まあ、実は5個焼いて1個試食してるからいっか。
「どうぞ」
「ありがとう!」
彼女の満面な笑顔は年相応だった。
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