失われた記憶 6
「で、何を作ってくれるのだ?」
彼女が僕をあざとく見上げている。バイトが終わった後、電話したらすぐにコンビニに彼女が来た。学校、行ってないんだろうか? この上目遣い、絶対自分が可愛いと思ってて、それを生かしてきてる。近くで見ると思ったより幼く見える。目が大っきくて子供みたいだ。
「おい、聞こえとるのか? で、何を作ってくれるのか?」
あ、いかん見とれてた。なんか、なんか言わないと。
「こっ、子供」
グッ、つい考えてた事が口に。
「子供? にゃんにゃんなのか?」
ま、まずいぞまずい! いたいけな少女に何作るか聞かれたんだった。いかん、最低極まりない返しだ。逮捕案件だ。けど、にゃんにゃんって何だ? 猫の真似なのか?
「こっ、子供が好きな料理」
なんとか誤魔化せたか?
「子供が好きな料理? お子様ランチなのか? ふざけてんのか?」
あ、やば、彼女のかんに障ったのか。そりゃそうだ。子供っぽいって言われて喜ぶのは中年女性くらいだろう。
「こっ、子供が好きな料理はお好きですか?」
「んー……別に嫌いじゃないぞ。嫌いな食べ物なんかないし、作って貰えるならなんでも美味しく食べてやるぞ」
「そっそれは良かったですねー。それでは材料を購入に行きましょう」
いかん、なんか言葉が文字化けしてる。けど、考えて欲しい。二十四歳、彼女いない歴二十四年の男がどうやって十代半ばと思われる超絶美少女と円滑コミュニケーションを取ればいいのだ。それから僕は何もない平地でつんのめりかけながらも、なんとか無事スーパーに辿り着き、どういう会話をしたか覚えてないけど食材を購入して帰宅した。なんかこれって新婚夫婦みたいってやつなんじゃ?
「どうぞ、お召し上がりください」
ヤバい。テンパってる。どうしてこんな事になった? そりゃ御飯を作るって言ったけど、なんで僕の部屋に美少女がいる? これって通報されたら逮捕されるんじゃないのか? 幸い僕は断捨リストで部屋には最低限のものしかないから部屋に軽く掃除機をかけるだけでなんとかなった。しっかり這いつくばって床に何か落ちてないか確認した。いつも部屋ではティーシャツパンイチで生活してるから、変な毛とか落ちてたらシャレになんない。折りたたみテーブルを出して彼女にお茶を出し、彼女に暇だったら漫画でもって言ってから、頭をフル回転させて調理した。学生時代の長いアルバイト生活で身につけた技術を遺憾なく発揮した。ここまで緊張したのは、店に三が日にフリーで団体のお客さんが入ってみんな単品で頼まれてオーダー数が60超えた時以来だ。まずは米を研ぎ炊飯器で高速炊飯。そして、米が炊けるまでの間に、途切れる事なく手を動かした。多分、三十分以上、全力で動き続けたと思う。全力を出すと五分もすると全身汗だくになる。
「いただきます」
彼女が手を合わせる。僕もそれに倣う。僕らは料理が並んだ小テーブルの前で正対している。く、口に合ったらいいが。
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