失われた記憶 3
「お願いします」
彼女が商品棚から持ってきたのは、20円のチョコレートと15円の駄菓子、酢蛸三太郎。ちょっと怪訝に思う。バーコードをスキャンすると彼女がたどたどしくタッチパネルに触れる。そしてお札を入金口に差し込むけど、何回か返金される。
「旧札使えませんか?」
「え、旧札?」
少女が手にしているのは聖徳太子の一万円でしかもピン札っぽい。画像で見た事はあるけど実物は初めてだ。確か諭吉さんに変わったのは20年以上前だったんじゃないだろうか? もしかしてプレミアついてんじゃ? いや、確かこういうのって思ったより安い。値段が張るのは、全部ゾロ目とか、ミスプリントだったと思う。それよりどうしよう。レジの中の一万円と交換してもいいけど、これって銀行の機械で読み取れるのか? んー、なんか色々ややこしいから僕が交換しよう。たまたま財布になけなしの万券がある。
「これと交換してください」
僕は少女の聖徳太子と僕の諭吉さんを交換する。
「ありがとうございます」
彼女は財布にお金をしまって、ポーチに財布とお菓子を入れる。ん、今の財布ブランド品だな。土星みたいなエンブレム。昔流行ったな。確かイギリスの女性のデザイナーで、ノーパンの人だったのを覚えている。パンクミュージックの人が好んでたなー。
そして彼女は僕に背を向けて店を出る。変わった色の髪の毛が風になびいていた。なんか森や林のような匂いがした気がした。
もう、彼女と会う事は無いんだろうな。ここは駅の近くで一見さんが多い。ほとんどのお客さんとは一回会うきりで、リピーターは多くない。その時はそう思っていた。
家に帰って一万円を見る。光にあてたら透かしもちゃんとある。まあ、偽札じゃないとは思ってたけど。余談だけど僕は今まで偽札?は二回手にした事がある。学生の時、個人経営の居酒屋でバイトしてた時、閉店後のレジのお金を数えてた時、両方とも千円札だった。一つはバラバラに切り裂かれて、セロテープで張り合わされたものだ。店長言うには百枚の同じ形の紙を決まった切り方をして決まったくっつけ方をすると、百一枚になるというトリックに使われたものだろうとの事だ。一枚お札が増えるが労力に見合ってないからイタズラだったんだろう。偽札かは微妙だけど。また違う日だけど、もう一つは凄かった。なんと、夏目さんが少し舌を出していた。それ以外は全く普通のお札と変わらなかった。しかも舌を貼り付けたのかと思って触ってみたけどツルツルだった。正真正銘の偽札だったんじゃないだろうか? 両方とも店長が引き取った。なんか昔偽札を警察に届けた時に、店長が犯人かと疑われて数時間拘束された事があるらしく、燃やすとか言ってたけど、どうなったのかわからない。写真に撮りたかったけど、店長に止めといた方がいいと言われた。
そんな偽札に思いを馳せながら、僕はしばし一万円札を眺めた。当然、番号はゾロ目じゃなかった。
「キラさん、助けてクダサイ」
僕がバックヤードの冷蔵庫でお酒の補充をしてたら、同僚のグエンさんが困った顔して来た。ついて行くと、レジでまた彼女。あれから数日たってる。
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。




