失われた記憶 1
「キラ、意識をしっかりもって」
目の前には少女がいる。緑の髪に緑の目。白いワンピースにすらりとした手足。顔は人形のように整ってて誰かに似てる。あ、僕、いやマリーに似てる。もしかして親類なのか? いや、僕は彼女を知っている。胸が締めつけられるかのように痛い。知っているけど、思い出せない。頭の奥が痛む。
「君は誰?」
今の僕はキラだ。ここは真っ白な何も無い、彼女と僕だけの空間。僕は何をしてたんだろう。少しづつ頭がはっきりしてくる。親父にリスポーンされたあと、僕たちが迷宮都市にやってきた教室に戻り、ウシオをホストにしてシェイドの部屋に入って飯食って風呂入って寝たはず。
「ラファエル。ここはあなたの夢の中。今なら若干なら私が干渉できるから、あなたの記憶にダイブするわよ。何であなたが思い出せないのかわからないけど、多分そこに答えはある」
微塵も感情を出さずに少女が話す。その無表情さが、見た目より大人びて感じられる。ラファエルというのが彼女の名前? 大天使の名前だ。彼女の容姿は端麗だけど、天使というより妖精って言葉の方が似つかわしい。
「いくわよ」
少女が背伸びして僕の顔に手を伸ばす。当然下がってよける。
「逃げないで、額に触れさせて。意識を直接繋ぐから」
「意識を繋ぐ? なんだそれ、こわ」
「もうっ。見られても困る事なんかないでしょ。あなたと私の間柄なんだから」
僕とこの娘の間柄? 僕が忘れているだけで、もしかして僕の彼女だったりするのか? あんな事やこんな事をしたりしたのか? 馴れ馴れしいけど、嫌な感じはしないけど、考えがまとまらないな。
「んー、なんか見覚えはあるけど、僕、あなたのことをあんまり知らないんですけど」
「もうっ、いいから動かないで」
彼女は強引に僕の腕を引っ張る。力強っ。前のめりになった僕の額に冷たい手が触れる。なんか熱がないか測られてるみたいだな。そういえば、風邪っぽい時にこっちの母さんがそうしてくれたなー。可愛い女の子に触られて少し嬉しい。いつもだったら触られると、少しだけやな感じがするのに。なんでだろう。僕は彼女を作りたいって思ってるのに、なんかサリーとかモモさんとかとは距離を作ってしまってるような。なんかが心に引っかかって、関係が友達以上まで進まない。人と親密になるのが怖いような。けど、今の僕はラファエルに触れられても、ドキドキするだけで後ろ向きな気持ちが無い。
ラファエルの手が温かく感じる。眠たいな。夢の中なのに眠たいってなんか変な感じ……
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