奇襲
「じゃ、ちょっくら奥で休んでくるわ。そのあとマリーちゃんのお仲間を昇天させてやんよ」
親父の声がするが、僕は倒れたまま動かない。ウシオとサリーとシェイドを昇天させる? やらせるかよ。
「オッサン、どこ行くんすか、休むもなんも唾吐くくらいしかしてないじゃないですか? ウシオさんたちの相手してくださいよ」
マグロの声が近づいてくる。こいつにリアクションされないようにしないとな。
「んぁ、唾の吐きすぎで、喉渇いたんだよ。腹も減ったしな。そうだな、豚、豚食いてぇな、あとエールはまだ早ぇから炭酸水だな」
なんで豚なんだよ。僕を見て豚を連想したのか。失礼な奴だな。僕は太ってはない。胸がデカいだけだ。
「炭酸水! あたしももらっていいすか? 喉渇いたっす」
「金取るぞ、金」
「何いってんすか。どうせ、女王様が取り寄せたやつなんでしょ。オッサンのものじゃないからお金なんか払わんすよ」
「じゃ、いくぞ。さっさと飯食ってマリーちゃんのお仲間と遊んでやらにゃいかんからな」
多分親父は僕に背を向けてる。ここでゆっくり数える。三、二、一、一瞬でいく。気取られないように。
『グラビティ・ゼロ!』
心の中で叫び重力を遮断し、浮いてる親父の背中をターゲティングして、音をたてないように床を蹴る。
さっきの親父のラスト龍涎弾の威力は凄まじかった。まともに食らったら即昇天だっただろう。けど、マリーにはキラにはない特技が実はもう一つある。体がめっちゃ柔らかいのだ。立ったまま体を下げると、足を伸ばしたまま頭にが足に着くし、開脚前後左右180度は軽くいける。その体の柔らかさを利用して、体をよじって、さっきの寄せた胸の後ろの体を左に寄せていた。正面から見ると、胸の後ろに体が無い状態を作り出していた。龍涎弾は正面から命中したから、その勢いは胸で止まっていた。もし銃弾を食らってたら、胸を貫通してただけだし、剣や槍で突かれてたなら胸が田楽刺しになってただけだ。名付けて『乳空蝉の術』。乳を身代わりに己の身を守りきった。けど、めっちゃ痛かった。がちでもげるかと思った。
親父目がけて僕は飛び出す。ラバーカップの柄を突き出して、狙うは親父の尻。ウシオに攻撃してたモン団長の姿が脳裏に浮かぶ。ありがとう団長、どんな事をしてでも勝つために足掻く姿を見せてくれて。死んだフリして、後ろからの奇襲。正直やってる事は最低だけど、親父は持てるものは全てを使えとか言ってたから、やられて本望だろう。
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