魔弾
「落ちろ!」
親父に出来るなら、僕にも出来るはず。いつもの『グラビティ・ゼロ』は解放されるイメージ、自由をイメージしてる。イメージをその逆、拘束に変える。下から引っ張られてるイメージ。対象は僕を含んだ小部屋くらいの空間。体が床に押し付けられる。
ぺちゃっ。
やった。僕の目の前の床に親父の唾が落ちる。
「ゴボッ」
僕は口から血を吐く。さっき胃に溜まったものだろう。ヤバい超重力に自分自身がやられてる。解除して体が軽くなる。
「ぶっ!」
げ、また親父が吐いた。
「オメガ・グラビティ!」
さっきのでコツは掴んだ。自分の周りの重力を超強化する。
「があぁぁつっ」
背中に焼け付くような痛み。
「馬鹿かよ。落ちるのがわかってたら、それを計算して撃つだけだ」
くそっ。親父に弄ばれてる。
「ぶぶぶぶぶぶぶぶっ!」
僕に雨あられと降り注ぐ親父の唾。散弾仕立てなのかさっきより一撃は軽いが、一般人のジャブくらいの威力はある。臭ぇ。その前にどんだけ唾あるんだよ。多分1リットルは食らってるぞ。どんな唾液腺してんだよ。
「うわ、放送倫理的にアウトな絵ね」
マグロが何か言ってる。
「実の娘にのべつまくなく唾を吐き続ける、きったねーオッサンに、悶えながら唾をかけられる、巨乳美少女。あ、これアダルトサイトで売れるわ。撮影撮影」
あのクソガキは……
「撮影すんなよ。絶対に撮影すんなよ」
「わかりました。フリですね」
「フリじゃねー。ぶっ飛ばすぞ」
「おいおい、マリーちゃん。楽しそうに会話して、余裕みてーだな。この技は話すと止まるのが難点だな。おら、ぶっといの行くぞ。げぼおおおおおっ」
げっ、今、げぼぅとか変な音が? 親父の口からバスケットボールくらいの大きな唾、いやあれゲロだろ。高速で飛んでくる。避けられない。
「ぐわっ」
頭にモロに命中した。そこまで痛くない。とは言っても頭を強くなんかにぶつけたくらいはある。それより全身にかかって素肌が出てるとこはなんかヒリヒリする。これ、胃液なんじゃねーか。なんか酸っぱい臭いするし、普通に腐ったものの臭いがするし……いかん、また意識を持ってかれてた。
「おうおう、大丈夫かー。これでおめーのオートヒールは封じさせてもらった。スリップダメージってやつだストリップダメージじゃねーぜ」
ストリップダメージってなんだよ。けど、ツッコむ余裕も無い。スリップダメージ、継続ダメージの事だ。親父の胃酸が僕のオートヒールを中和してる。いや、回復をわずかに上回ってるようだ。ヤバい。恐るべし胃酸。




