竜涎弾
「ちょっとー、マリー様も、きたないオッサンも、そろそろ決着つけてくださいよー。あたし、こう見えて暇じゃないんですよ、家帰ってゆっくり動画みたいんすよ」
「おい、マグロ、そのスマホどうした?」
「ああ、これですね。借りてます。このエリアでしか使えないけど、便利ですよ」
まじか、女王にお願いする事が増えたな。
「マグロ、どうにか、お前の知力と美貌で、親父を説得してくれよ」
「無理ですよ。出来れば同じ空気を吸いたくないくらいです」
「そうか、ガキ、おめー俺様が吐いた息をそんなに吸いたいのか。存分味わえ。ふー、ふー」
親父がマグロの方針に息を吹きかける。
「止めてくださいよ。距離あってもなんか臭く感じるじゃないですか」
よし、また親父とマグロの掛け合いが始まった。僕はゆっくりと降下する。多分親父は弱ってる。その剣の魔女王と、モモさんにこっぴどくやられてるんだろう。どこまでやれるかわかんないけど、今はチャンスだ。ウシオたちと分断したのもそれが理由だろう。そして、地に足がついた瞬間、親父に向かって突進する。ラバーカップの柄を突き出す。当たっ、らない。親父の姿が掻き消える。空気は上に流れた。見上げると親父。良かったあんま明るくなくて、親父の腰巻きの中は暗くて見えない。気分が悪いので、後ずさる。親父の下に居たら何されるかわかんない。軽く放尿とかされそうだ。
「かーっかっ。惜しかったなぁ。おめーの手があと1メートル長かったら当たったのになー」
「ふざけるな。そんだけ手が長かったら、妖怪だよ。惜しくも何ともねーじゃないか」
「ふざけてんのはてめーの方だ。そんななんのひねりもないのが当たる訳ねーだろ。舐めんなよ。最初に舐めていいのは先っちょだけだ、ぶっ!」
親父が言葉のあとに口を尖らせる。なんか吐きやがった。
「ぐわっ!」
額に何かが当たって吹っ飛ばされる。
「痛ぇ、なんだこりゃ?」
咄嗟に額を押さえると、ベタっとした何かが手につく。嫌な予感がして嗅いで……
「臭っ!」
いかん、今一瞬意識を持ってかれた。危ない危ない。悪臭でリスポーンするとこだった。
「なんじゃこりゃ?」
ふらつきながらもなんとか立ち上がる。
「竜涎弾だ!」
「りゅうぜんだん?」
「竜のヨダレの弾って書いて、竜涎弾だ! お前も聞いた事あるだろ。竜涎香って。なんかいい匂いがする、香水の原料らしい。」
えっ、ヨダレ? きたなっ!
「何格好つけた名前つけてんだよ。要は、おめーの唾なんだろ」
最悪だ。最悪な攻撃だ。しかも中々威力があった。普通の人のパンチくらいの力あったんじゃないか?
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