ぱぱブレス
「げっ! いつの間に!」
僕の左胸にラバーカップが当たっている。まただ。親父が微塵も動かずに移動して、目の前でラバーカップを突き出している。それに今は重力をカットしてる。ほんの少しの風でも僕は押されるはずなのに、いつの間にか重さが戻ってる。どうなってるんだ?
「マリーちゃん、もしこれが剣だったらアウトだったねー。ほらもう一丁」
カップを引いてまた突き出してくる。重力をカットしてまた弾き飛ばされるのを狙う。
「すっぽーん」
げっ、次は右胸にカップがクリーンヒット。カットしたはずの重力が感じられる。失敗したのか?
背中越しにマグロの声が聞こえる。
「マリー様なにやってんですか。そんなへなちょこな突きかわせるでしょ? カップに当ててあそんでんすか? 当ててんのよって言いたいんすかー?」
確かにそうだ。端からみたら、カップで胸をツンツンされて遊んでるようにしか見えない。新喜劇のドリルのアウトバージョンだな。
「マリーちゃん。パパはマリーちゃんの師匠だーよ。回りの重力なんか思いのまーまだーよ」
げっ、まじか? 僕の重力操作が効かない? そうか、多分あいつは自分の重さをゼロにして、何らかの推進力で移動してるんだろう。そして、僕が重力をカットしてもそれを戻して攻撃を当ててくる。ぐっ。他に親父に対抗できる事が思い浮かばない。あと僕ができる事と言ったら癒す声だけだ。
「どうしたのかなー? じゃ、次の攻撃いっちゃうぞー。すぅー。ぐっはーーーーーーっ。琥珀色のオーバーブレス!!」
親父は息を吸い込むと吐き出す。いかん迂闊だった。親父との接近戦はNGだ。口から迸る薄茶色の気体。琥珀色と言えば聞こえはいいが、汚え琥珀だな。臭ぇ。いかん目にも入った。浸みるっ。即座に親父から距離を取る。
『琥珀色のオーバーブレス』とか大層な名前をつけてるが、要はめっちゃ臭い息だ。涙で視界が滲む。くそっ。思いっきり吸い込んじまった。マジで臭い。口の奥に苦味が走る。本当に臭いものは、味覚が暴走して味がしてるような感じになる。もはや毒ガスだ。
「さすがに、俺様相手に素手はきついだろ。これでも使え」
親父が僕にラバーカップを投げてくる。なんか親父が触れたってだけで避けたくなるけど、今の僕には武器がない。泣く泣くキャッチする。具合を確かめるためにラバーカップの重量をゼロにして一度二度と全力で素振りする。
「うおっ」
空気抵抗が弱くと思ったら、ゴムの部分がすっぽ抜けて飛んでった。
「マリー様、何すんですか。私は審判ですよ。審判への攻撃は禁止ですっ!」
おっ、たまたまゴムはマグロの方に飛んでったみたいだ。ざまあみろ。当たれば良かったのに。
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