ラバーカップは大事
「なんだよ、それ!」
目の前で親父がキュッポンを手に躍る躍る躍る。お前、歳、幾つなんだよ。
「はっはー。うんこには相応しい武器だろ。これでどんなに詰まらせても安心だ。安心しろ、まだ未使用だ」
そんなもん武器にするのは小学生低学年男子くらいなもんだろう。
「ばかかよ。未使用でもそれを振り回してるだけで十分変態だよ。スクランブル交差点でそんなん振り回してみろ、即、お巡りさん案件だ」
ここには騎士団がいたはず。こんな不審者を野放しにしないで檻に放り込んで欲しい。
「大丈夫だ。ここにはお巡りさんは居ない。俺が正義だ。ダ〇ソーの百円ラバーカップの力、受けてみよ」
ダ〇ソーのかよ。確か人気商品で品薄だったような。そう言えば前世で、夜中トイレが詰まってパニックになって業者さんを呼んだら、使ってた機械が、キュッポンをメカニックに進化させたようなものだった。それで詰まりは簡単に取れたんだけど、深夜料金や出張料とかで、二万円近くかかって泣いた記憶がある。要はほとんどの詰まりはキュッポンで取れるんだ。コツはカップの中に空気を入れずに水で満たして圧力がかかりやすくする事だ。あと、押す時より引く時に力をかけた方が安全だ。押す時にはっちゃけたら、飛沫を食らう可能性がある。
親父はキュッポンのゴムの方を僕に突き出す。おいおい、悪ノリしてる中学生かよ。てか、そう言えば、あれってラバーカップって名前のか。まんまだな。少し勉強になった。正式名称もキュッポンかスッポンかと思ってた。
「ちょっと待ってください。私が審判しますよ」
僕と親父の間にマグロが割り込んでくる。こいつ、どこから発生しやがった? 地縛霊なのか?
「おいおい、お前、さっきあっちに居なかったか?」
「あれは分身です。本体はここに隠れてました。ちなみに分身はウシオさんに処せられました。マリー様とウシオさんを分断したら危険って事ぐらいマグロはわかってますよ」
処せられたって、ウシオ……まあ、ここはリスポーン可能だからな。けど、さすがウシオ。マグロはかなり強い生命体だからな。
「それでは、私が号令をかけさせてもらいます。レッツ! ファイトォーッ!」
マグロが右手を上げて下がる。まあ、こいつなら、親父と僕のバトルに巻き込まれたとしても問題ないだろう。僕は右足を下げファイティングポーズをとる。んー、邪魔だな。胸……
「先手必勝」
言葉と同時に親父の腕が伸びたかと思った。相変わらず動き全般がキモい。微動だにせずに、ラバーカップを突き出したまま突進してきやがった。どういう体してんだよ。初めてみる技?だ。
「グラビティ・ゼロッ!」
即座に僕の総重量をゼロにする事で、ラバーカップが押し出した空気で僕は吹き飛ばされる。途中で重さを戻し止まる。親父は攻撃特化だ。こういう守りの小技は知らないはずだ。
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