7:流れ星ひとつ
音麻とはぐれ、世麻の前に現れた少年。
少年の能力に困惑する世麻に少年は更に能力を発動させていく……
!注意!
血が表現されています。
苦手な方はおすすめできません。
いくら泣いても涙は止まらなくて…
いくら声が枯れても叫びたくて…
流れ星ひとつ
―――…ズキュンッ…!
僕は震える手で弾を放った。
幻覚で出来た母親は弾をすり抜けただけで、消えはしない。
「く、そっ…。」
ぐっと拳を握った。
早く覚めろ、覚めてくれ。
さっき幻覚を覚ますために傷つけた腕が痛む。
これを覚ますためにまた傷つけると体がもたない。
そのとき、ガクンっと体の力がぬけた。
怖さや不安、全てが真っ白になっていく。
僕が僕でなくなったように体が勝手に動く。
右手をゆっくりあげ、母親に向けた。
うるさいほどの火花が散る音が鳴る。
―――…ドンッ!!
激しい爆発音がなり、辺りが火の海となる。
爆風で僕は飛ばされた。
地面に打ち付けられ、体が自分のものに戻った。
「ハァっ…ハ、ァ…」
息がきれ、体力がいまの能力でかなり減ったのが分かる。
僕の能力であって、僕の能力でない。
勝手に能力が発動した…。
思い出したら寒気がする。
怖い…
能力に飲まれてしまいそうで。
――…ドンッ…
また小さな爆発音がする。
その途端、幻覚の暗闇の間から光がもれた。
―――――――
『なぁ、―――。遊びに行こうか。』
『そうね。動物園にする?水族館の方がいい?』
『えっとねー。どうぶつえん!』
光の間に親子が見えた。
どこか見たことのある光景だった。
丁度名前のところが聞き取れない。
『いやぁぁ…!』
『おい、人が燃えてるぞ!』
あぁ…。
僕だ。
記憶から無理やり消した思い出だ。
まだ能力の存在に気付いてなかった頃。
…動物園で…、起こったんだ…。
両親とはぐれて、1人で歩いてた。
誰かとぶつかって、泣いてた僕は余計に涙が出た。
『ちっ…』
舌打ちをされた事に、怖くて。
怖い、そのとたん体が熱くなって、気が付いたら人が燃えていた。
何が起きたのか分からなくて、ただ体が疲れきっていた。
自分がやったのかわからなくて、それでも自分の疲れきった体が『犯人』だと言っているようで。
『―――!』
『―――、お前…』
『ぼくじゃ、ない!』
母親は僕の名前を叫ぶように呼び続け、
父親はいつものように僕を抱きしめず、
僕の変わりに、怯える母親を抱きしめていた。
僕の周りから人は居なくなって、離れたところから陰口を言う人ばかりだった。
僕が燃やしたのであろう人の家族が、僕に声にならない叫びで何かを話す。
怖かった。
どうしようもなかった。
普通に人間が何も使わずに人を燃やすことなんて出来ない。
それでも、得体の知れない子供が人を燃やした。
その事実はその場にいた人々にとって思い知らされた事だった。
幻覚は更にぶれ始め、光から見えた幻覚も歪んだ。
そして、一瞬のうちに消え去った。
―――――――
「くそっ!」
ガキは悔しそうに地団駄を踏み、僕を睨みつけた。
僕は許せなかった。
頑張って、頑張って、頑張って忘れた記憶の欠片。
それを一瞬に思い出させた。
それがこいつの能力の使い道であって、
戦闘において最も効果的だって分かる。
それでも、僕にとって思い出したくもない事実をもう一度思い知らされて…。
僕の存在が分からなかった。
思いもしない場所で初めて能力が発動して、
それが僕の全てを変えた。
あのとき、散々呼ばれた名前はすっかり記憶から抜け落ちて、
幻覚でみた記憶からも名前だけが分からない。
それは、どこか悲しいものだった。
僕はガキに能力を発動した。
ガキも能力を発動したが、間に合わない。
爆発音と共に火が辺りに燃え移る。
「っ!」
ガキは素早く火から逃げて、足に火傷を負っただけだった。
僕はゆっくりとガキに近づくと、銃を構えた。
「や、め…っ。」
ガキに命乞いさえさせずに発砲した。
ガキの血が僕の服へ、顔へ飛び散った。
「ね、お…。」
もう、自分がコントロールが出来ない。
自分の気持ちが能力に埋もれていく。
ただ能力が僕を戦場に狩り出すだけ。
それだけ。
「…行か、ねぇと…。音麻が…。」
今思うのは、音麻を助ける。
それだけ…
流れ星が消える前、三回願い事を言えたら願いは叶う。
今ならそれが信じられる。
また、流れ星が流れる。
能力と自我に分からなくなっていく世麻。
どうだったでしょうか?
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