6:幻覚使い
反組織の存在を消滅する任務を受けた世麻たち。
その中で、世麻と音麻は調査を行う。
2人に降りかかる新たな敵は…
ハッとして、目を開くとそこは暗闇の中だった。
幻覚使い
「音麻…?」
僕の声は虚しく響くだけで、返事をする声はなかった。
人の気配はまるでない。
寒い…。
足が震える。
怖い…。
感じたことの無い感覚。
確か、耳元で銃声がして。
あの弾はどうなったんだろう?
僕に当たった?
それとも音麻に?
もしかしたら、奴は外したのかもしれない。
…とにかく此処から抜け出さなければ。
でも、どこか分からない此処からどうやって…?
目の前がぼやける。
考えろ…考えろ……。
気を失った訳じゃない。
それなのに、僕を知らないところに連れて行く事はできるわけが無い。
此処に来る前に聞いた声は、字麻を殺した風に話していた。
その事も入れて考えると、何かの能力としか考えられない。
…此処に…?
考えられるのは、瞬間移動か…
それとも、幻覚……
だとしたら…
僕は、持っていたナイフで自分に刃を向けた。
勢い良く腕を斬りつけた。
「っ!!」
痛みが体中に広がる。
そのとき、視線の先にあった暗闇が歪み始める。
合間から光がもれ、僕も笑みをこぼした。
「なにっ!?」
エコーのような声が響く。
「…幻覚、使いみたいだな…?」
僕が言うと暗闇は眩しく輝き、元居た場所へ変わっていった。
僕の腕からは思ったよりも大量の血が流れ落ち、
傷が深いことがよく分かった。
「自分を傷つけて能力をとくなんて、頭可笑しいんじゃねぇの!?」
声の主は、どこからどう見ても僕より年下のガキだった。
「ガキがほざくな。」
「うるさいっ!」
ちょっとの事でムキになるなんてやっぱガキだ。
こんなガキも反組織にいるなんて…
そう思わずにはいられなかった。
弾は?
さっき撃たれた弾は?
辺りを見渡すと、僕の血ではない血が飛び散っている。
音麻の姿はなく、冷たくなった字麻がいるだけだった。
「おい。奴をどこにやった…?」
このガキの力では、僕よりも背の高い音麻を運べる訳がない。
「さぁ?さっきの傷、深かったし
今頃死んでんじゃない?」
あの弾は音麻に当たった。
そして、別の奴に連れて行かれた。
そう考えるのが一番しっくり来る。
僕は仲間に助けられた。
傷を負ったとき、それは死を感じる。
もし、それを音麻が感じているならば……
―――…カチッ!
火花が散るような音と共にガキの足元が燃える。
「うわぁっ!」
ガキは大げさに避けると、僕に手を向けた。
また、視界が歪みはじめる。
「ちっ…。」
僕は舌打ちをし、境界線のように僕の周りを炎で囲む。
ガキの能力と僕の能力が反発して、
バチバチと音が鳴る。
しかし、僕よりも早く能力を発動させたガキの方が
僕の炎を飲み込んでいった。
ヌルっとした冷たい感触が僕の足に触れる。
驚いて足をみて、ギョッとする。
見たことの無い腐った手が、僕の足を強く掴んでいた。
思わず足を振り払い、前を見ると視界いっぱいに
目を覆いたくなるような死人の顔が映った。
しかも、どいつも見たことのある顔だった。
人の記憶をいじりやがって。
そう思っても、自然と冷や汗が流れる。
『…人殺し…』
『許さないっ…!』
『殺してやる!』
そいつらは恐ろしい顔で僕に言い寄る。
口々に言っていても何を言っているのか分かってしまう。
「ハァッ…ハァ…!」
息が乱れ、尋常じゃないほど足が震える。
怖いわけじゃない。
幽霊や亡霊なんて怖くない。
そんなんが怖いわけじゃない。
……自分が怖い…
こんなにもの人を殺していたと思い知らされる。
僕は…何なんだ?
ただの人殺し…?
「ッ…ハッ…ハァ…」
意味が分からない。
今まで気にしていなかった事が頭に流れてくる。
気付いた時には走り出していた。
幻覚だと分かってるはずなのに必死になってもがいてしまう。
走っていると、思いっきり何かにぶつかった。
「痛…。」
勢いがあり過ぎて、派手に転けた。
ゆっくりとぶつかった何かを見上げた。
「あ…っ!」
血の気が引くのが分かる。
そこにいたのは…
最後に見た、母親の姿だった。
母親は何かを言うが、聞き取れない。
「分かんねぇよ…!」
思わず耳をふさぐ。
聞きたい
聞きたくない
自分が分からない。
もう、定かではない母親の姿は懐かしいよりも恐ろしいものだった。
母親の口は止まらず、ひたすら何かを口にする。
「っ…嫌…だ……!消、えろっ!」
呂律がうまく回らない。
震えていた足が、更に震える。
『はやく死んでちょうだいね…?』
え…?
母親の声が聞こえた。
一度聞こえると、頭に残る。
頭の中で響く。
最後に聞いた母親の声。
最初で最後の母親の願い。
何かが切れた。
激しい激痛が頭に響く。
「いやだぁぁああああぁぁぁ!!」
頭を抱える。
痛い…
怖い…
苦しい…
「あ…あぁぁ……。」
何かが消えていく。
これは悪い夢だ。
そうに違いない。
「っ…あ、あぁっ…!」
あの消し去りたい過去はもう終わった。
なのに、どうして…!
「ちく、しょ…。」
幻覚で僕を追い詰めて。
絶対に許さない。
「くっ…!」
いくらもがいても震えた体は動かない。
大丈夫、これは幻覚なんだから。
そんな事には思えない。
僕は弱いから…
強くなりたい…
強く……
過去に振り回される世麻たち。
どうだったしょうか?
忘れられない嫌な思い出に立ち向かう世麻を
次も書いていきます!
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