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5:もしも、神様がいるならば…

新しいチームになり、不安を抱えた世麻たち。

反組織消去の任務に向かった世麻たちに、新たな問題が…

いつ死ぬか分からないこの人生で、

できるだけ多く生きていると実感するために…






         もしも、神様がいるならば…





「世麻《ぜお》、どうする?」

「情報が少なすぎる。相手の能力《ちから》も、行動もつかめない。

まぁ、取り合えず、情報を集めるのが一番賢い行動だろ?」

音麻《ねお》は可愛げのない僕の返事に苦笑すると、

立ち上がり、ズボンに付いた砂を払った。


反組織の消去のために、組織本部からかなり離れた場所に僕らは来ていた。

今までにない緊張感が漂い、それぞれ失敗が目立った。

そしてなにより、新しいチームになって初めての任務でもあり、

心を許しきれない状況にあった。

チームを編成をしてから、訓練や食事、私生活を共にし、

出来るだけチームの状況を良くしようとしたのは音麻と歌麻《かお》だった。

それでも、奈麻《なお》や羅麻《らお》は相変わらずだった。


「…お、ぜお、聞こえる?」


ザザ――…

と言う雑音の後、耳に着けていたイヤホンから歌麻の声が聞こえた。

「あぁ。」

「すこしだけ、情報つかめたよ。」

どこに居るのだろうか。遠くから幾つかの話し声が聞こえていた。



「反組織は本部の他にも、各地にいくつかの組織を持っている。

能力者はあたし達組織の方が多いけど、一般市民が組織内にいる可能性が高い。」


一般市民の前に姿を現してはいけない。

何より、能力者の存在を知らしめる事が許されない。

だから、反組織内に一般市民がいる可能性がある中、突入する事はできない。

市民に何かあれば組織を初めてとして、国も危うい。それは避けなければならない。

組織にしか僕たちが住む場所はない。

だから、僕たちはただならぬ不安を感じていた。



「だから、今は様子を見るしかないかな?

無駄に探って見つかっても駄目だし。」

「わかった。」


僕が返事をすると、イヤホンからは何も聴こえなくなった。


「聞いてた?」

僕の問いかけに音麻は頷いた。

「無線は俺のと繋がってるし、お前にかかってきたのもちゃんと聞こえる。」

草むらの中に僕と音麻は座り込んだ。

遠くに見える反組織本部に動きはなく、人がいるのかさえも分からない。


逃げたか?

一般市民はいるか?

奴等はどう動く?

能力《ちから》はなんだ?

何も分からない。


そのとき、耳をつくような悲鳴が響き渡った。

「っ!?世麻!」

「わかってる!」

強く地面を蹴り、走り出す。

肌で感じるほどの殺気が漂う。

近くなってきた建物は、近かよれば近寄るほど生活感のないことが分かる。

鉄筋コンクリートの建物は錆びて今にも壊れそう。

銃を構え、建物の影に隠れる。


「人いんのかよ…。」

音麻の呟いた言葉はもっともで、僕も疑わずにはいられない。

「さっきの悲鳴の正体が分からない限り、動けない。

調べるしかないだろ?」

「でも、うかつに近寄ったのは間違いだったかもな。」

音麻の言葉に、思わず声が漏れた。

「確かに…な。」


―――…ガンッガンッ!


建物内から何かを強く打ち付ける音がする。

「ここまで来たんだ。どうせ見つかるなら入るか。」

音麻は素早く建物に入っていった。

「おい…!」

僕は焦って音麻に付いていく。

建物の中は暗く、ゾッとするような冷たい風が吹いていた。

気配を出来るだけ消し、ゆっくり奥へ進んで行く。


「った…。」

前を歩いていた音麻にぶつかった。

「音麻?急に止まるな……っ!?」

目を凝らしてみると、そこは血の海だった。


いくつもの死体が転がっていて、そこら中に血が飛び散っている。

鼻をつく腐った臭いに僕も音麻も顔をしかめる。

「字麻《じお》…?」

今にも消えそうな音麻の声が響く。

音麻はひとりの死体に近づいていく。

「おい、触んなよ。」

僕の声を無視してその死体を抱き起こす。


「字麻…、字、麻?嘘だろ…?

なぁ、起きろって。ふざけんなよ…ふざけんじゃねぇ!!」


悲痛な叫びが部屋中に広がる。

字麻と呼ばれた死体の服には【2】と書いてあるバッチが着いている。

バッチには組織の紋もはいっていて、組織の一味だと分かった。

頭からの出血を見ると、さっきの何かを打ち付ける音は

頭を壁に打ち付けられた音だと思う。

叫び声も字麻の声だと納得できる。


音麻がもともといたチームの1人だったのか…。

もし、音麻が僕で、字麻が零麻《れお》たちの誰かだったら。

僕は立っていることさえ出来なくなって、壊れてしまうかも知れない。

それは、家族に見捨てられたときよりもずっと怖いことだと思う…。


「なんでっ…!なんで勝手に突入してんだよ…?

危ないことくらい分かれよ。」

震える声で無理に笑う音麻が痛々しかった。

「いつも、こいつ勝手でさぁ…。

注意しても聞かなくて…。」

「音麻…。」

どうしたら良いのか分からない。

どう声をかけたら良いのか分からない。



「ほんっと、勝手に入って来て、そのくせ直ぐに死にやがって。」

くつくつと笑う声が背後でした。

「だれだっ!」

僕は大声で姿の見えない相手に問う。

銃を構え直し、出来るだけ目を凝らす。




…――――ズキュンッ!!


…耳元で銃声が響いた…。






もしも、僕に能力《ちから》がなかったら…

もしも、能力者という存在がなければ…

もしも、組織と言う存在がなければ…

もしも、反組織なんてなければ…

もしも、こんな場所に来なければ…

もしも、もしも、もしも、もしも、もしも――…


願いはいつだって叶わない。

過去はいつだって皮肉で。

未来はいつだって血に染まる。


だけど、もし神様がいるのならば…

一瞬でいい。

この銃声を消してください――…

感想をいただけると嬉しいです☆

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