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3:繋いだ手から【絆】

それぞれの不幸な過去や運命。

それを共に分かち合っていけるもの。

それは……


!注意!

話の中で血が出てきます。

苦手な方はおすすめできません。

『「いやだぁあぁぁぁ!!」

体中に走る痛みも、

目を背けたくなる光景も、

なにもかもが生きている証でしかない。』


「今回の任務は、国の情報を狙っている奴らの消去だ。

心してかかれ。」

先生の指示で建物内に入り込む。

分かれ道をバラバラになり、それぞれ進む。


誰もいない。

そう思って、少し油断したのがダメだった。

「…!」

痛みを感じたときには、もう体は自由に言うことを聞かなかった。


ダンッ!

ダンッ!

何発もの銃撃を受けた。

体にいくつの弾が入ったのだろうか。

ふと、そんなことを考えた。





            繋いだ手から【絆】




―――…、死ぬのか…?


痛みをもう感じない。

暖かいのか寒いのか分からない。

ただ、目の前に広がるのは紛れもない自分の血で。

視界の高さは自分が倒れているということで。


死にたくない

死にたくない

死にたくない


焦ると気持ち悪くなり、口から血が出てくる。

むせて咳が止まらない。

それだけの事で、肩で息をつくほど息が上がる。



「死んだか?」

「いえ、まだ息があります。」

「そうか…。これほどの傷でも生きているとは、さすが能力者だな。」

僕を見下げる冷たい目はじっと僕を見た。

「おい。国の情報、教えろよ。」

倒れている僕の髪を鷲掴み、しゃがんだ時の目線まで

僕の頭を持ち上げた。

「…だ、れが…、おし…え、るか。」

相手は舌打ちをすると、力強く掴んでいた頭を床に叩き付けた。

もう倒れこんでいた体にとっては、それほど強い痛みは感じなかった。

分かるのは、体から血が流れていることくらいだった。


目を閉じようと思っても、思うようにいかない。

今まで何人もの今の僕と同じような人々を見てきた。

それが今の僕だと考えると、なんだか可笑しかった。

「っは、はは…っ!」

思わず笑ってしまう。


「は、ははっ……。」

笑いが止まった頃、瞼《まぶた》が重くなってきた。

死が近い。

そう思った。

そのとき、重い扉を開ける音がした。

開けた扉から入ってきたのであろう足音は、

僕の方へ近づいてくる。


重い瞼を閉じ、軽く息を吸い込む。


足音は僕の傍でピタリと止まった。

聞き取れない小さな声で足音の持ち主は何かを話していた。

誰かが僕の頭を掴んで、持ち上げた。

「っ…。」

僕は薄く目を開いた。

ぼやけて、焦点の合わない視界には2人の男が映った。

「何も話さないなら、生かしておく理由はない。

さっさと殺してしまえ。」

「はい。」

命令した男の煙草の臭いが鼻につく。


カチリッ


こめかみに銃の冷たさを感じる。

あぁ、僕は頭を撃ち抜かれて死ぬのか…。

そんな事をぼんやり考えた。

能力《ちから》を使って逃げようか。

手に力が入らなくて、その考えは捨て去られた。

もし、能力《ちから》が使えても、この体じゃ逃げ切れないのは分かりきっている。

もう、生き残るための手段は何ひとつ残ってはいなかった。


薄く開けていた瞼をゆっくりと閉じる。

殺すなら、早く殺せ。

そう思っていると、ガラスを割る音が建物中に響いた。


「なんだっ!?」

男は思わず僕の頭から手を離した。

床に頭をぶつけた衝撃でさっき閉じた目をもう一度開いた。

「うわぁぁぁぁああっ!!」

男を眩しいくらいの電気が囲んでいた。

電気同士がぶつかり合い、火花が散る。

「いやだぁあぁぁぁ!!」

もう1人は叫び声と共に足から徐々に氷漬けになって行く。

この能力《ちから》には見覚えがあった。


零麻《れお》…

魔麻《まお》…


「世麻《ぜお》!」

聞き覚えのある声が聞こえ、僕の傍へやって来た。

「酷い怪我…。急いで、戻らないと。」

焦った中にも冷静さを持った、詩麻《しお》の声が眠気を誘った。

「世麻、寝ちゃダメ!」

羽麻《はお》の焦った声に笑みがこぼれる。

「わかっ…て、る…。」

「喋んなっ!」

零麻は強く言い放つと詩麻の顔を見た。

それが合図かのように詩麻は頷き、僕に手を向けた。

フワリと体が宙に浮いた。

その途端僕は深い眠りについた。

「寝ちゃダメ!」と言う羽麻の声を残して。


長い間、夢を見た。

いつもの悲しい夢なんかじゃなくて、幸せで楽しい夢。

現実はいつも厳しくて、辛くて、息をするのがやっとで。

もう、現実なんか見たくもない。

いっそ、このまま夢を見続けたい。

そう思っていると、声が聞こえた。


『世麻!』


涙で震えた声は確かに僕の名前を呼んでいた。

今まで僕はなんのために生きてきたのだろう?

理由なんてない。

探しても、考えても、理由は思いつかない。

誰かに必要とされてもいなければ、存在でさえ疎まれて。


『ぜ、お!ぜおっ、世麻!』


ただ名前を呼んでくれて、

僕に笑いかけてくれて。

たったそれだけのものが欲しくて。

信じることが出来なくても、どこかでいつか報われると信じていた。

傷つきたくない。

それでも、可能性があるなら。

助けてくれたアイツらが僕を呼んでくれるなら。

この声が途絶えるまで…



「っ…!」

重たい瞼を開くと、身体中に広がる激痛にもう一度目を瞑った。

今度はゆっくりと目を開くと、魔麻と零麻が僕の部屋の椅子に座っているのが見えた。

規則正しく肩が動くのを見れば、眠っていると分かる。


右手と左手に感じる温もりは、詩麻と羽麻が手を握っていたことだ。

右手を強く握りながら、うつ伏せになり、布団に顔を埋めて眠る羽麻の頬に涙の跡が見えた。

左手を軽く握り、椅子に腰かけたまま眠る詩麻は、いつもの警戒心が見えた。

そんな詩麻に頬が上がった。



抱き締めてもらった思い出は何一つなかった。

裏切りが僕をつくり、憎しみが僕を強くする。

零麻たちや先生とは深い関係で関わるつもりなんてなかった。

また裏切られるのが恐くて。

次こそは僕が僕を殺しそうで。


それでも、手を繋いでくれて、温もりを与えてくれて…


――――…名前を呼んでくれて…


それがある限り、生きる理由となり、僕を強くしてくれる。

そう信じてる。

信じていたいから…。


助けてくれた仲間がいるから、もう一度手を繋いで。

信じて、仲間を守り、守られ、少しずつでいい…。

少しずつ、そういう関係を築いていけるようになりたい。



ありがとう、名前を呼んでくれて。

ありがとう、助けてくれて。

ありがとう、笑いかけてくれて。

ありがとう、ありがとう、ありがとう…。


もう二度と繋いだ手を離さないように……。

やっと、心を許せる人を見つけた世麻。

どうでしたか?

感想をいただけると、嬉しいです。

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