2:それは一瞬。
さまざまな過去を心に秘めた能力者の想い…。
注意はありません。
手に意識を送れば、赤い炎が燃える。
いくつものモノを燃やしてきた。
何度も自分の感情を燃やしてきた。
でも、それを癒せるものは何ひとつなかった。
それは一瞬。
「やれ。」
何時もの冷たい声と同時にナイフを持った、何人かが飛び出してくる。
そいつらの攻撃をうまく避けながら、そのうちの1人の腕を掴む。
掴んだ手に意識を送る。
小さな爆発音と共に掴んだ腕に火が着いた。
「うわっ。」
小さな叫び声を出し、僕から逃れるように1歩下がる。
周りの奴らも一瞬怯み、冷や汗を流す。
ナイフを握りなおし、僕に立ち向かってきた。
攻撃を避け相手の握るナイフを落とさせる。
それを相手より素早くナイフを拾い、構える。
少し油断したとき、腕に痛みが走った。
腕を見ると、久しぶりに見た自分の血が流れている。
それから能力をうまく使い、
全員を倒したときには息が切れ、肩を揺らしていた。
「なんか、今日の訓練の相手強くなかった?」
僕が訓練室から出ると、少し遅れて他の4人もそれぞれの訓練室から出てきた。
「そうそう。なんか毎回強くなってる気がするし。」
「1番最初する訓練の、的当ての的も小さくなってるし。」
「それをこなしてる自分も怖いし。」
どんどん能力が強くなり、そのうち自分でコントロールできなくなる。
能力が僕を支配する。
そんな遠くない未来を恐れている、僕らがいる。
冷たい部屋に5人集まり、素っ気のない料理を食べる。
「詩麻、醤油取って。」
羽麻が言うと、醤油は宙に浮き羽麻の元へ勝手に動く。
「ありがとう。」
私生活でも詩麻はよく能力を使っていたし、
それほど能力は身体の一部となっていた。
他にも、
電気を扱う零麻。
水、氷を扱う魔麻。
風を扱う羽麻。
それぞれが目覚めてしまった能力を
恨みながらも、精一杯馴染もうと努力してきた。
今までつくってきた絆や、想いや、生活や、夢が
目覚めた事で一瞬に崩れ落ちた。
普通だった生活も一生懸命になっていたことも叶わなくなっていく。
『お前の名前は今日から【ぜお】だ。』
冷たい瞳の中にどこか暖かさをもっていた先生は、
泣きじゃくる僕の肩を持ち、そう話した。
『組織の事は暮らしていくうちに分かるさ。
さぁ、今日は疲れたろう?おやすみ…。』
先生の声は不安の中に安心があって、僕は倒れこむように眠りについた。
もう定かではない家族の顔は僕らにとって、
存在理由ともなっていた。
「世麻、どうした?」
魔麻は僕の肩を叩いた。
「あ…。いや、なんでもない。」
「食わねぇの?もーらいっ!」
僕の分のパンを零麻が取る。
その零麻の手に火をつける。
「は!?あちっ!」
その途端、魔麻が零麻の手に能力で出した水をかける。
「てめっ、ふざけんなよ。」
「人の取るな。」
「だってさ…。羽麻笑うな!」
そんな何気ない会話も存在していると実感できることで。
いつ死ぬか分からない、この世界の中で精一杯生きている証拠で。
一瞬の出来事が生死を分ける。
もがき苦しんで、苦しみのどん底から這い上げれると信じて。
そしたら、きっと笑えると願って。
苦しみ、死、血――――……
きっとこの想いから抜け出せると信じて…
声が枯れるくらいの叫び声を、幸せな涙に変えることができると信じて…
誰かが心から必要としてくれると信じて…
たったの少しでいい。
幸せな夢をみたいから。
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