1:キミトボクノキョリ
国に障害となる人物を抹殺。それを運命とされた能力者。本編、1話目です。
!注意!
血や死が出てきます。苦手な方はおススメできません。
最後に握った母の手は、小刻みに震えていた。
血がにじむほど唇を噛み、やつれた顔に何かに酷く怯えた中にも
光を宿した目を光らせていた。
キミトボクノキョリ
雨でぬかるんだ地面は歩くたびに泥がはねた。
「羽麻。」
僕が指示を出すと、羽麻は遠くに見えるログハウスに近づいた。
詩麻は黒く長い髪を結い始めた。
「いいよ。」
羽麻の指示でログハウスへ走った。
近づき、ログハウスに聞き耳を立てた。
『組織もあの能力をもったガキ共さえ処分すれば、
なにも恐れるものはない。』
小さく聞こえた声に魔麻はグッと拳を強く握った。
「どいて。」
零麻の声に頷いてログハウスから少し離れる。
零麻は銃を構え、発砲した。
それとほぼ同時に僕達も発砲した。
―――――………。
銃でボロボロになったドアを蹴り開けて、中に入る。
中は血の海で死体が転がっている。
そのとき、ガタッと物音がした。
「っ!!」
全員死んだはずじゃ…!
そう思って勢いよく振り返ると、端のほうで小さい子供を抱きしめ、小さくなっている親子がいた。
怯えた目で僕をきつく睨んでいた。
「…っ!殺し屋!この子を殺したら許さない!!」
叫ぶように話す母親に銃を向けながら近づいていく。
母親の服をギュっとつかみ、涙を流す子供を見ると、
冷や汗が流れた。
身体が動かない。
小刻みに震える。
頭が痛い。
頭を殴られたような衝撃が走り、
遠い【記憶】が目の前に映り始めた。
なんだよ、これ。
どこなんだよ、ここ。
動揺がおさまらない。
目が泳いでるのがわかる。
手から銃が滑り落ちていく。
『息子さんを我々に渡してくださって本当にありがとうございます。』
『やめてくださいっ!!息子なんかじゃない!こんな化け物っ!
早く連れて行ってください…。同じ場所に居るだけでどうにかなりそう…!』
僕はただ、崩れていく母親の顔を見つめることしか出来なかった。
『それでは、最後に一言子供に言ってあげてください。』
母親は僕の目線までしゃがむと耳元で囁いた。
「…――、はやく死んでちょうだいね…?」
そのまま母親は僕に背を向け歩きだした。
『お母さん?まって、お母さん!』
黒尽くめの奴に僕は建物の中に連れて行かれる。
『お母さん!置いてかないで!お母さん、お母さん!!』
それが母親との別れであり、先生、組織との出会いだった。
奇妙な能力をもった子供が生まれて、
幸せなはずの生活が壊されて、
どれだけ苦しかっただろうか。
母親なんて嫌いだし、思い出したくない思い出だけど。
それでも、壊れていきながら育ててくれた母親の存在大きかった。
ダンッと、耳元で銃声が響いた。
その音で目の前が現実に戻っていった。
響いた銃声は目の前にいた親子を打ち抜いていた。
ゆっくりと倒れていく2人を見つめた。
そのとき、軽い痛みが頭に走った。
「世麻、ボーっとすんな。」
零麻は軽く僕を一発叩くと笑った。
国の情報が入ったディスクを奪って逃げようとしていたこいつら。
組織にその情報が来れば、すぐに消去される。
「みぃーっけ。」
羽麻はディスクを僕に見せた。
ディスクを持ってログハウスを出ようとすると、
母親の手が少し動いた。
銃を構え、母親に発砲した。
大量の血が流れはじめた。
「なんか、疲れた。」
「世麻、今日なんもしてないじゃん。」
「一応したけど。」
建物の中と言っても、冷たく寒い部屋の一角を僕の部屋としていた。
羽麻は僕のベッドに横になり、組織のメンバーファイルをめくった。
「ねぇ、世麻は6歳のときここ来たんだね。」
「うん。」
「あたしは4歳なんだけどね、世麻が来た日のこと覚えてるよ。」
羽麻は明るく笑うけど、僕は笑うことは出来なくて。
誰かに背を向けられることにどこか恐れていて。
「羽麻、世麻。次の任務だ。」
「「はい、先生。」」
今まで多くの人の命を奪い、これからも大勢の人の命を奪う。
それは許されない事。
それでも、生きる場所は、帰る場所はここしかなくて。
だから生きていくために、僕にしかできないことをやっていく。
母親との距離はもう一生うめる事はできない。
仲間や先生ともこれ以上距離を縮めようとは思わない。
それでも、生きていくために。
例え自分を殺していくとしても…
ぜおの悲しい過去はどうでしょうか。
みんな成長させていきたいと思います。
組織のことをもっと出していきます。
感想をいただけると嬉しいです。




