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第4話 お好み焼きと、選ばれなかったボーロ

 宅配作業を終えて、

 宇宙船は自動運転で帰路についていた。


 届け先の惑星では、

 雪が降っていた。

 寒波が来ているらしく、

 外気は、かなり冷えていた。


 船内は、いつもどおり静かだ。


 床のほうで、

 何かが転がった。


 テニスボールだった。


 それを見つけた瞬間、

 くーちゃんが、勢いよく飛び出す。


 夢中で追いかけて、

 くわえて、

 そのまま、こちらに――来ない。


 一瞬、

「渡してくれるのか?」

 と思ったが、

 くるりと方向転換して、逃走。


「……おい」


 追いかけようとした、そのとき。

 俺の腹が鳴った。


 ……ああ。

 そういえば、と思い出す。


***


 スペースポートの出店に、

 人だかりができていた。


 銀色の、やけにオシャレな鉄板。

 その前で、

 大将風のおじさんが、

 ヘラを器用に動かしている。


 焼いていたのは、

 お好み焼きだった。


 一つ、頼むと、

「遠い惑星の野菜を使っててね」

 と、言いながら、

 手際よく作り始めた。


「材料、こだわってるから」


 そう言って、

 鉄板の上で、生地を返す。


 焼き上がると、

 近くにいた女の子に向かって、

 大きく手を振った。


「また買ってね! お嬢ちゃん!」


 ……なんだか、

 器用で、

 エネルギーに溢れた人だな、と思った。


***


 お好み焼きは、

 ふわふわで、やわらかくて、

 中のお肉は、ジューシーだった。


 今度、寄るときも、

 また買っていいかもしれない。


 そんなことを思いながら、

 食べ終える。


 足元に、

 くーちゃんがやってきた。


 こちらを見上げて、

 行儀よく――おすわり。


「キャン!」


「……はいはい」


 今日は、

 ちょっとしたサプライズがある。


 知り合いのおじさんからもらった、

 オヤツの福袋。


 開けてみると、

 中には、

 サラミ、

 金時、

 砂肝ふりかけ、

 極上ボーロ。


 床に、

 順番に並べてみる。


 ……すると。


 くーちゃんは、

 砂肝ふりかけを、

 チョンチョン。


 もう一度、

 チョンチョン。


「え?」


 ボーロも、

 サラミも、

 見向きもしない。


「……そこ?」


 今日は、

 珍味が食べたい気分なのか。


 そう思って見ていると、

 くーちゃんは、

 ベロを、ちょっとだけ出して、

 にこっと笑った。


 今日も、

 一日、平和に過ぎていった。


 明日は、

 何か起こるだろうか。


 ……いや。

 やっぱり、

 平和がいいな。


 そんなふうに思いながら、

 宇宙船は、静かに進んでいった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


くーちゃんとの宇宙船の日常を、

少しでも「いいな」と思っていただけたら、

評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです。


また次のごはんの時間に、

ふらっと遊びに来てください♪

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― 新着の感想 ―
そしてこちらは単品のお好み焼きですか。 大将が用いている「遠い惑星の野菜」がキャベツや白菜のような葉物野菜か、或いはネギやニラのような薬味系の野菜なのか、興味深い所です。 宇宙時代にも粉もん文化が健在…
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