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2/12

第2話 キツネうどんじゃなかった日

 浄化作業は、自動に任せていた。

 船内は静かで、警告音も鳴っていない。

 待ち時間、というやつだ。


 操縦席の前を、

 クリーム色の毛玉が、ふわりと流れてきた。


 くーちゃんだった。


 無重量のせいか、

 泳ぐみたいに、ゆっくり。


 俺の目の前を通り過ぎて、

 そのまま、ぽん、と着地する。


 向かった先は、クッション。


 顔を、ぐいっと埋めて、

 そのまま、寝そべった。


 耳が少し立っていて、

 正面からみると、キツネみたいだった。


 ……似てるな、と思ったところで、

 俺の腹が鳴った。


「……あ」


 そういえば、と思い出す。


***


 仕事に入る前、

 スペースポートのスーパーに寄った。


 新年だし、

 何かあったかいものを、と思って。

 いつもは、キツネうどんを買う。


 でも、その日は、

 隣に並んでいた、かき揚げうどんが目に入った。


 たまには、いいか。

 そう思って、そっちを取った。


 レジにいたのは、

 年配のおばさんだった。


「寒いですね」


 そう言われて、

「そうですね」と返す。


 よく見ると、

 ダイヤ柄の、黒いコート。

 少し薄くて、

 たしかに寒そうだった。


***


 冷蔵庫を開けて、

 かき揚げうどんを取り出す。


 ポッドから、

 お湯を注ぐ。


 テーブルに置いて、

 椅子に座ると、

 くーちゃんが足元にやってきた。


 一度、

 くるっと一周して、

 そのまま、元のクッションへ戻る。


「ああ……興味なし、か」


 スペーステレビをつけて、

 うどんを食べる。


 ニュースは、新年の話題。

 遠い星の、カウントダウン。


 食べ終わりかけに、

 ふと視線を上げると、

 くーちゃんが、クッションの上で、

 さっきと同じポーズで、こっちを見ていた。


 やっぱり、

 キツネうどんのほうが、よかったな。


 くーちゃんが、

 眠そうにあくびをした。


 今日の一日は、

 特に変わらない一日だった。


 でも――

 今日は、これでいい。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


くーちゃんとの宇宙船の日常を、

少しでも「いいな」と思っていただけたら、

評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです。


また次のごはんの時間に、

ふらっと遊びに来てください♪

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