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いつから俺の青春が『普通』だと思っていた?  作者: 結城 ユウキ
第1章 『普通』じゃない彼女

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第5話

 翌日。我が二年E組のクラス。


 新学期から一週間以上経ち、グループも固まって来た頃。


 俺はひたすらに旭丘唯を観察していた。それはもう、ストーカー並に。


 クラスのみんなに気づかれないように行動を逐一目で追い、向こうが席を立てば俺も立って後をつけ、授業から席を外せばバレないようについていく。


 そして気づいてしまった。


 話しかける隙なんてないことに。


 先生にぶつかってこいなんて言われたものだからそれを実行しようとしたものの、そもそもぶつかれないというバグが起こっている。


「まいったな……」


 放課後、机に突っ伏してぼやく俺に話しかける声。


「なにがまいったの?」


 顔を上げるといつもの優しい笑顔を浮かべている湊。今日もこいつは顔がいい。


「いや、ちょっとな」

「もしかして、朝からずっとストーカーしてる旭丘さんに関係ある?」


 驚いた。誰にも不審がられていなかったから隠し通せていると思っていたが、湊の目は誤魔化せなかったらしい。


「よく気づいたな」

「……彩人のことだからね」


 そう言って笑う湊と、


「なんだそれ」


 それにつられて笑う俺。


 そのやり取りに微かな違和感を覚えたが、その違和感は湊に話しかけられたことで霧散してしまう。


「それで、どうしたの?」

「ああ、それが……」


 俺は簡単にことのあらましを湊に話した。小竹先生の部分をうまく省きつつ、俺が今なにをしようとしているのかだけを伝える。


「なるほど、それは大変だ」


 苦笑いしながら湊は言った。


「そう、大変なんだよ」

「旭丘さん、掴みどころがないからね」

「そもそも話しかけられないし。放課後とかもうどこでなにをしているかもわからない」


 会長の話ではいろいろな部活に顔を出しては部員の精神を破壊する活動を行っているらしいから、どこの部活にいるかは当日にならないとわからない。


 当然気分じゃない日もあるだろうから、放課後になってすぐ帰宅している可能性だってある。


 だとすれば日中、一時間目から六時間目までのどこかで話しかける必要があるのだが、それは無理ということが今日一日張り付いてわかった。


「え、詰んでないか?」

「地道にやっていくしかなさそうだね……」


 そこにいつものごとく話しかけてきたのは知佳。


「なんの話?」


 俺は湊に話したことをそのまま知佳にも話した。味方は多いほうがいいし、なによりこの二人は信用できる。


「なるほどねえ……確かに難しいわ」

「だよな。だから助けてくれ二人とも」


 ここは素直に助けを求める。俺一人ではできることが限られてしまうからだ。


「もちろんいいけど、性別的にサッカー部には来ないだろうしな……。ちょっと周りの人にそれとなく声かけてみるよ」


 湊の所属するサッカー部に、マネージャー以外の女子部員はいない。さすがの旭丘も、フィジカルが関係するスポーツでわざわざ男子に挑むような真似はしないだろう。


「私もバスケ部に来たときくらいしかわかんないかも」


 急に助けを乞うても、嫌な顔ひとつせず聞き入れてくれる。いい友達を持ったと改めて思う。


「それだけでも助かる。でも実際そんなに部活荒らしてんのか? 旭丘は」


 会長の話を疑っているわけではないが、どうも信じられない自分がいる。


「そうね」


 そう答えた知佳は続ける。


「私がいる女バスには来てないけど、女バレには来てたわね。隣のコートから見てたけど、正直すごかった。初心者とは思えない」


 ジャンルが違うとはいえ、次期部長候補とも言われている知佳にそこまで言わせるとは。旭丘の運動神経は相当らしい。


「でも、旭丘さんが来てから休みがちになった子がいたりやる気がなくなったりした子がいるみたいで、ちょっと思うところはあるね」


 どれだけ真面目にやっていても、才能だけの初心者に全く歯が立たなければ、今まで積み重ねてきたものが全て無駄に思えてもおかしくはない。


 それだけ残酷なことを旭丘はやっている。意識しているのか無意識なのかはわからないが、結果として人を傷つけることになっている。


「卓球部とかバドミントン部とかにも来たらしいけど、全員蹴散らされたって」


 スマートフォンを操作しながら言ったのは湊。


「全員って……。ていうか湊お前、今の短時間で聞き込みしたのか?」

「え、うん。みんな僕がメッセージ送ると即レスくれるんだよね」


 この人誑しめ……。


 友人の人望を見せつけられつつも、少しではあるが旭丘のことがわかってきた。


 とはいえ、なぜそんなことをしているのかは全くわからない。その動機がわかれば、生徒会に引き込むことも不可能ではないと思うが……。


 とにかく、旭丘と接触しないことにはなにも始まらない。


「またなんかわかったら連絡してくれると助かる」


 そう二人に告げ、その場はお開きとなった。


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