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いつから俺の青春が『普通』だと思っていた?  作者: 結城 ユウキ
第3章 君のいない教室

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第22話

 旭丘が学校に来なくなってから一週間が経過した。


 最初は心配していたクラスメイトも、次第に興味を無くし、旭丘がいないことが当たり前のような雰囲気。


 そんな空気に辟易としていたが、何もできないという点では俺も似たようなものだった。自分の無力さをまざまざと見せつけられたような気分だ。


 気持ちが晴れないまま午前中を過ごし、いつの間にか昼休みになっていた。湊と知佳に声をかけられ、昼ご飯を食べるために席に着く。


「旭丘さんと連絡取れないの?」


 開口一番、湊がそう尋ねてきた。


「全然ダメ。うんともすんとも言わないな」


 何もできなかったが、何もしなかったわけじゃない。毎日メッセージを送り、着信も入れた。それでも、彼女からの反応はなにもなかった。


「私もダメ。折角仲良くなれたのになあ……」


 知佳は球技大会で旭丘とかなり距離が縮まったらしい。事実旭丘についていけるのは知佳だけだったし、知佳の要求に応えていたのも旭丘しかいなかった。そんなこともあり、彼女たちは連絡先も交換したとのこと。


 旭丘も、そのことは喜んでいたと思うが……。


「僕もいろいろと調べてみてるけどダメだね……。彩人、家は知らないの?」

「最寄りは知ってるけど、家までは知らないな」


 同じ路線を使っているため距離的には近いが、具体的な家の位置までは知らなかった。


「もう二十四時間駅で張ってなさいよ。そしたらいつか会えるかもしれないでしょ」

「無茶言うな」


 だが、もうそこまでしないと旭丘に会えないかもしれない。

 俺は放課後、旭丘が住んでいる街に足を運ぶことにした。



 目的の場所に行く前に、俺は職員室に寄り道をした。


 放課後の職員室は授業やHRを終えた先生たちが多くいてなんだか身構えてしまう。入る時に名乗らないといけないのも、少し苦手だ。


 そんな思いで職員室に足を踏み入れると、目的の人物が席に座っているのが見えた。


「先生」


 そう声をかけると、小竹先生は読んでいた書類を置き、体ごとこちらに向けてくれた。


「おー立野か。どうした」

「……旭丘のことで」

「ああ……。お前のところにも連絡ないんだろ?」

「……はい」

「そうなるとお手上げだよなあ。私が連絡しても全く反応なしだし。親御さんにも連絡つかないんだ」

「そう、なんですね……」


 病気や事故でないことを祈りたい。ただただ面倒くさくなって来ていないという理由であってほしい。


「まあそう落ち込むな。氷川のところには行ったか?」

「まだです」

「じゃあ行ってこい。あいつも探してるだろうから」



 俺は言われるがまま、その足で生徒会室へと向かう。


 生徒会室ではいつものように会長がてきぱきと仕事をしていた。


 顔もあげずに、会長は口を開く。


「どうしたの? 今日は活動日じゃないはずだけれど」

「……その、旭丘の件で」


 俺がそう言うと、会長は手を止めこちらを見た。


「旭丘さんは私も探しているわ。彼女ももう生徒会の一員だから。ただ、学校内のことならまだしも、学校外となると少し難しいわね」


 学校内でのことは何でも知っている会長だが、一歩学校の外に出てしまうと学校内ほどの情報網はないということだろうか。


「でも立野くん、どうしてあなたがそんなに必死になるの?」


 確かに会長からしてみれば俺が旭丘を探していることは不思議に写るだろう。俺が旭丘を生徒会に連れてきたとはいえ、あくまでそこまでの関係だと思っているはず。


 それは実際間違いではない。


 最初に比べれば話すようになったし、連絡先も交換をしたが、それまでだ。似た者同士ではあるが求めていることは違って、友達と呼べるかと言えば首を傾げるだろう。


 だが、それでも。


 俺には旭丘を探す理由がある。


「……あいつともう一回、話をしないといけないんです。そのためなら俺は、なんだってしますよ」


 あんな酷いコミュニケーションが、人との関わりの最後であっていいはずがない。だからこれは俺のエゴだ。向こうがどう思っているかなんて関係ない。


 俺は俺の『普通』のために、旭丘に会いたいのだ。


「……そう。そういうことなら二十四時間三百六十五日相談に乗るわ。いつでも連絡入れなさい」


 会長の言うことだからこのいつでもは言葉通りのいつでもで、世辞でもなんでもないのだ。その時が来たら、その言葉に甘えよう。


「……ありがとうございます」


 そう口にして、俺は生徒会室をあとにした。


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