第21話
球技大会午後の部。
俺は多くの時間を校庭で過ごしていた。校庭では男子のサッカーが行われている。サッカー部を中心に経験者も含めてみなが楽しんでいるようだ。サッカーはバスケほど接触もないので、トラブルも起きにくい。
とはいえ疲れた。
午前中ほどのトラブルはなかったが、選手として出場して生徒会の仕事もこなすのは中々に骨が折れた。というか多分折れてる。物理的に。
本部の椅子に座りながら疲労を全身で感じていると、近寄ってくる影が見えた。
「お疲れ、彩人」
「湊。そっちもお疲れ」
颯爽と現れたのは一日動き回っていたはずなのに疲れ一つ感じさせない男、早宮湊だった。本当に隙のない男である。
「生徒会、忙しそうだったね?」
「ほんとだよ。実行委員がなにもかもこっちに投げてくるんだから」
「あはは、耳が痛いね」
「そういえば旭丘見なかったか?」
旭丘に対して謝罪もしたかったのだが、俺は俺で忙しく、向こうは向こうで選手として試合に出ずっぱりだったので話す機会はとうとう訪れなかった。
「うーん、見てないな。でも、彼女すごかったね」
「そうだな」
旭丘は女子の競技に全試合出場し、獅子奮迅の活躍を見せた。ドッジボールをやらせては彼女に向かって投げられたボールは全てキャッチされ、そのボールが剛速球になって返ってきたり、バスケをやらせてはバスケ部だろうが経験者だろうがおかまいなしにドリブルでぶち抜き、華麗にレイアップを決めたりしていた。
バスケに関しては知佳もいるので、うちのクラスが負けるはずもなく見事全勝。知佳と旭丘の間には因縁めいたものがあったが、この球技大会を通してその蟠りはなくなり、すっかり打ち解けていた。旭丘も当時のことは反省していたので、これにて一件落着ということにしてもらいたい。
「男子に混ざってちょうどいいくらいの実力だったね、あれは」
「本当にな。今度からあいつ男子枠でいいだろ」
「旭丘さんと、なにかあったんだ?」
「……!」
こういう時の湊は本当に鋭い。きっとこの男に本当の意味での隠し事はできないのだと、俺は身を持って実感する。別にそれでなんら支障はないのだが。
「まあ、な。ちょっと喧嘩、みたいな……」
「喧嘩? 彩人にしては珍しいね。喧嘩なんてめんどくさいことをするくらいなら平気で土下座するタイプでしょ」
「お前な……」
湊は心底驚いたような声を出したあと、突然俺を刺してきた。事実でも言って良いことと悪いことがあると思うな、うん。
「でも、まあ、確かにそうだな」
普段ならあんなにイライラすることなく、適当に流していただろう。それが生徒会の仕事をしているからなのか、相手が旭丘だからなのかは、俺にはわからなかった。
「どっちが悪いの?」
「俺」
「……そこで即答できるの、結構すごいと思うよ」
「そんなことないだろ」
だってあれはどう考えても俺が悪い。同じことを言うにしても、もっと違う言い方、伝え方があったはずだ。それを考えなしに思ったことを口走ったからこうなった。
「でも、たまにはぶつかっていいんじゃないかな。彩人にはそういう友達、必要だよ」
「……助言痛み入るよ」
「旭丘さんに会えるといいね」
「ああ」
だが、その日を最後に、旭丘は学校に来なくなった。
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